雪に覆われたハイクレア。12月の城の公開日は数日間だけ。クリスマスにはさまざまなイベントが催される
昔はクリスマス前に、村人たちを館に招待する日を特別にもうけていたそうです。村の子供たちのためにツリーの下にはクリスマスプレゼントが用意されたのだとか。
現在、ハイクレアでは、クリスマスの伝統行事の一つとしてチャリティイベントを主催しています。「クリスマスは、受けるよりも与えることを学ぶ時」とレディ・フィオーナは言います。寄付金の行き先はハイクレア教会と、医療用航空機(ドクターヘリ)。
すっかりクリスマス・デコレーションが整ったサロン。村の人たちは「ハイクレアのクリスマスツリーを見ないとクリスマスが来た気がしない」と言うそう。クリスマスマーケット
ハイクレア村の人々は、毎年12月初旬の2日間にわたって開かれるチャリティー向けクリスマスマーケットを楽しみにしています。
ジャムや蜂蜜、クリスマスキャンドルにリース、アクセサリー、ギフト用の小物や洋服などを販売する30軒のスタンドが城の内外に立ち並び、人々はクリスマスプレゼントのショッピングに興奮気味です。
毎年開かれるクリスマス市には、村人だけでなくロンドンからの訪問者も。2日間で約2000人が訪れる。聖歌隊の歌声に酔いしれる
ハイクレアが仕掛ける「ソングス・オブ・ピース(平和の歌)」というチャリティー・ナイトも人気です。
きらびやかなクリスマスツリーがそびえ立つサロンでは、温かいスープやケーキ、スコーン、スパイスが効いた温かいムルドワインなどが振る舞われます。 ツリーのそばでは、聖歌隊が清らかなキャロルを歌い、暖炉の火が歌声に呼応するかのように揺れます。
吹き抜けのサロンは音響もよく、聖歌隊が歌うキャロルが天に届くかのよう。 12月中旬、最後のイベントが終わり、門が閉ざされると、城は冬眠に入ったかのように静まり返ります。一夜明けると一面真っ白なクリスマス景色になっていることも。
けれども外の寒さをよそに、城内ではカナーヴォン伯爵家のプライベートなクリスマスのお祝いが、始まります。そのお話はまた次回に。
●フィオーナ・カナーヴォン伯爵夫人/ロンドン生まれ。6人姉妹の長女。 セント・アンドリューズ大学で英語とドイツ語を専攻、ロンドンで国際会計士として働く。1999年カナーヴォン伯爵と結婚。一人息子エドワードの母。ハイクレアのガイドブックをはじめハイクレア絡みの数々の著書をしたため、歴史家として知られる。趣味は乗馬、読書。オフィシャル・サイトは
https://www.ladycarnarvon.com/次回の「ハイクレア城に暮らす クリスマス特別編」は12月13日配信予定です。
これまでの連載記事一覧>> 山形優子フットマン/Yuko Yamagata-footman
フリーライター
上智大学文学部社会学科卒業。カルフォルニア州立大学心理学科でヒューマニスティック・サイコロジーを専攻、修士課程修了(ロータリー財団奨学生)。新聞記者を経てフリーライターに。在英約30年。イギリス人男性と結婚、3人の娘の母。著書に『憧れのイングリッシュガーデンの暮らし』(エディシォンドゥパリ)、『なんでもアリの国イギリス なんでもダメの国ニッポン』(講談社文庫)他。
構成/樺澤貴子