お医者さまの取扱説明書 総合内科医の尾藤誠司先生に、患者と医師の良好コミュニケーション術を教わります。
記事一覧はこちら>> 「しかたがない」と頭でわかっていても、心で受け入れられない「家族の認知症」。 何とかしてほしいと医師に多くを期待しすぎると、かえって失望し、悲しみが増すことになりかねません。“家族と本人を支える重要な補助者の一人”としての医師とつきあうコツを伺います。
尾藤誠司先生独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 臨床研修科医長・臨床疫学研究室長
医師は“補助者の一人”。できることには限りがある
「認知症にはほかの病気と異なる特徴があります。それを知ったうえで家族としての心構えをもっておくと、医師との関係や本人の症状も含めた全体がうまく運びやすくなります」と尾藤誠司先生はいいます。
特徴は次の3つ。(1)病気か否かの境目が非常にぼんやりしている。(2)本人の問題だけでなく、家族関係など本人を取り巻く環境の中でうまくいかない状況が生じている。(3)困っているのは本人よりむしろ周囲である。
「したがって、本人を対象に医学的手段による診断と治療を行う医師が、認知症に対してできることには限りがあります。
たとえば診断には脳のMRI画像や認知機能テストも参考にはなりますが、“以前と比べて今の状態がどうか”の変化が重要で、身近な家族のほうが的確に診断できる場合もあります。
そして“治す”という意味での治療は難しい。認知症への対応を医師に期待しすぎると、本人も家族もかえって失望し、つらくなる場合が少なくないといわざるをえません」
感情的には非常に難しいことですが、元の状態に戻ってほしいと思わないことは、家族としての心構えの基本といえそうです。
「生活の中で、家族も本人も負担やストレスが少なく傷つかない状況を作る方法を考えるのが現実的です。自分たちが主役になって行政・介護・医療などさまざまな立場の専門家の助けを借り、医師のスタンスも“補助者の一人”ととらえるのが相応でしょう」
では、家族が医師に期待できることは何か。
1つは・・・