薬や診断は必要ないことも。かかりつけ医の経過観察は大事
では、家族が医師に期待できることは何か。
1つは薬の処方。不眠や食欲低下、下痢や便秘など気になる症状の治療や予防のための薬を出します。認知症そのものの進行を遅らせる薬は、効果の個人差が大きいことや副作用の問題から使用に慎重な医師も少なくありません。
また、かかりつけ医が定期的な診察を行い、状況を把握することも重要です。認知症のタイプ(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など)をMRI検査などを用いて診断し、症状の出方や先の見通しをつけるのも医師の仕事の範疇です。
しかし、認知症の人とその介護者がより幸せな生活を続ける上で、必ずしも正確な医学的診断が必要とはいえません。
「治らないからといって悲観することはないのです。認知症の症状には、本人にとって何かしら重要な意味があるはずだと私は考えています。
たとえば“物とられ妄想”は孤独感の表現かもしれない。意味を探る必要はないけれど、意味があることを尊重したい。症状を無理に抑えるのでなく、起きたときの対応法や環境を変えることを考えて症状とつきあっていくほうが穏やかな解決法のような気がしています。認知症に“治るか、治らないか”の物指しはそぐわないと思うのです」