――いつもはかっこいい役の多いイ・ビョンホンさんですが、“いい意味で”私たちを裏切るような今回の役柄を選んだ理由を教えてください。
この作品は、「ユーモア」と「涙」が同時にある映画ですが、全体的な情緒は「寂しさ」だと私は思います。その寂しさという情緒が私にとってはこの映画の出演を決めた最も大きな理由でした。
――今回、ジョハを演じる上で一番大切にしたこと、こだわったことはどんなことですか?
幼い頃にとても大きな不幸を経験して孤独に生きてきた、というバックグラウンドがあったとしても、非常に心が暗いとか、かわいそうな人には見せたくありませんでした。なぜなら、そんな自分を不幸だとかかわいそうだとか思う余裕さえジョハにはないのです。
だから、ジョハはどこか子供のようですし、笑える面もあります。そして、むしろ幸せな瞬間がやってきた時に、つまり母親や弟と幸せな時間を迎えることで「あぁ、これまで俺は不幸だったんだな」と思うことになるわけです。そうした感じを考えながら演技をしたように思います。
――この映画は、暑い夏の時期に撮影したそうですが、いかがでしたか?
そうですね、思ったよりもしんどくはなかったです。実は私は冬がとても苦手なんですが、夏は大丈夫な人間です! 私にとっては寒さが何よりの敵です。『天命の城』もとても寒くて大変でしたが(笑)、今年はドラマ『ミスターサンシャイン』の撮影をしていた冬と夏がとても大変でした。今年の冬と夏というのは記録的な寒さ、暑さでしたからね。これまで経験した中で一番しんどい気候だったように思います。
――ジョハの個性的なヘアスタイルや服装にはご自身の意見も投影されていますか?
最初、特にこれと言ってイメージはありませんでしたが、監督といろいろ話をしていく中で、「ジョハはスポーツ刈りにしよう」ということになりました。その時のヘアスタイリストさんがまず髪の毛を上のほうから切ってしまって、最初は「ん?」となったんですが、よく見ると何か妙にジョハに合っている気がして(笑)。そうしてこのジョハの髪型が誕生しました。洋服もいくつかは、私自身が昔本当に着ていた服を現場に持って行ったりもしました。