治る力 現代人は医療や薬に頼りすぎて、もともと備わっている自然治癒力が減退しているといわれます。“治る力”を活性化するにはどうしたらよいか、専門家にお答えいただきます。
記事一覧はこちら>> 細胞から元気になる(2)
適度な負荷(低容量ストレス)が、ストレスに負けない心と体をつくる
人は心ない言葉に傷つき、つらい思いに耐えていると、腹痛や頭痛、不眠などのストレス性の症状が現れることがあるものです。「しかし、細胞にはストレスに傷ついた心身を修復する力が潜んでいます」と話す山田豊文さん。その力を引き出す方策をうかがいます。
前回の記事「細胞の老化を防ぐ「山田式ファスティング」とは?」はこちら>>杏林予防医学研究所所長
山田豊文(やまだ・とよふみ)さんあらゆる方面から細胞の環境を整えれば、誰でも健康に生きていけるという「細胞環境デザイン学」を独自に提唱。「杏林アカデミー」(2013年開校)や「アカサカフロイデクリニック」(2015年開院/最高顧問に就任)を通じて、本来あるべき予防医学と治療医学の啓蒙や指導を行う。著書・監修書に『細胞から元気になる食事』(新潮社)、『死ぬまで元気に生きるための七つの習慣―自然的生活のすすめ―』(山と溪谷社)、『老けない体をつくる新習慣』(宝島社)など。 寒冷の刺激がHSPを増やす
現代病の多くは過剰なストレスが要因といわれます。ただ、ストレスには心身を苦しめる悪いストレス(ディストレス)と、やる気を起こしたり、勇気が湧くなどのメリットをもたらす、よいストレス(ユーストレス)の両面があることをご存じでしょうか。
私が提唱する細胞環境デザイン学では、このユーストレスに注目し、心身への適度な負荷が細胞を活性化することから、『寒冷』『運動』『断食』の3つの主要な低容量ストレスを暮らしに取り入れることをすすめています。
なぜ『寒冷』が必要かといいますと、よく知られている飢餓、高温・高熱などのほか、寒冷による刺激によっても、ストレスたんぱく質とも呼ばれる“HSP(ヒートショックプロテイン)”がつくられるからです。
HSPは、ストレスにさらされた体内でその状況に適応しようとしてつくられるたんぱく質で、傷んだ細胞の修復や免疫細胞の強化、ストレスに耐え得る心と体を養うなどの働きを担っています。
私が『寒冷』を強調するのは、冬には薄着で過ごし、戸外の寒さを体感することが、翌夏には熱中症の危険が軽減されるなど、1年を通してストレスに負けない健康な心身をつくるもとになるからです。
私自身、寒い日ほど薄着になり、コートを着ないで外出するようにしています。みなさんもこの冬はなるべく暖房に頼らず、寒冷の刺激という季節がもたらす低容量ストレスを十分に味わってみてはいかがでしょう。