「そういえば、東京で前回『フラメンコ曽根崎心中』を上演したのもサッカーワールドカップの年でした」と笑う阿木さん。ちなみに2015年は大阪と新潟、一昨年は静岡の浅間神社で上演している。――歌といえば、徳兵衛の歌を務める三浦祐太朗さんの、魂の叫びのような素晴らしい歌声が印象的です。
「ぴったりですよね、あの何とも言えない哀切を感じる声が。若い歌い手さんで、祐太朗さんのように陰影がある声を持った歌唱力のある人はなかなかいないので、今回もすぐに、ぜひまた出ていただきたいとお願いしました。やっぱり、(母の山口)百恵さんの遺伝子が受け継がれているんだなと感じます。実は前回の東京公演を、(百恵さんが)観に来てくださったんです。祐太朗さんのステージを観るのは、文化祭以来初めてだとおっしゃって、とても喜んでくださって」
――今回の公演では、百恵さんの数々のヒット曲を手がけられた阿木さんと宇崎さんのお2人が、祐太朗さんのために作った曲も歌われるとか?
「祐太朗さんのオリジナルアルバム『FLOWERS』に収録されている『菩提樹』という曲です。実はこれ、百恵さんが引退前に歌ったラストソング『さよならの向う側』のアンサーソングとして書いたもので、また逢えることを固く胸に誓いながら相手を想う曲になっています」
――ほかには、どんなところが進化しているのでしょうか?
「2時間だった上演時間が10分長くなりました。休憩を1回入れて、全3幕でお届けします。お初と徳兵衛も新たにWキャストにしたので、鍵田真由美さん&佐藤浩希さんの圧巻のダンスはもちろん、工藤朋子さん&三四郎さんの若い情熱やエネルギー溢れるダンスも楽しんでいただけたら。歌も祐太朗さん以外は新しい方ですし、語り(録音)も今回は仲代達矢さんにお願いしています。ほかにも、琵琶を津軽三味線に替えて、木乃下真市さんと奥さまの松橋礼香さんに演奏をお願いしたり……鍵田さんと佐藤さん、工藤さんと三四郎さんもご夫婦なので、私と宇崎を含めて4組の夫婦が関わっていることになりますね(笑)。全体としても、かなり底上げ感があると思います」