「印象深いのはジュリーと百恵ちゃん。誰もを惹きつけるオーラがありました」―芳村さん
──当時活躍されていた歌手のなかで、特に印象に残っているのはどなたでしょう。
芳村 私はジュリー(沢田研二)と山口百恵ちゃん。あの二人はオーラがありました。ジュリーはお高くとまっているわけでもないのだけど、ふっと立ってるだけで、みんなが注目しちゃう。百恵ちゃんもそうでした。
ヒットスタジオはわいわい賑やかな番組だったけれど、二人が出てる日は静かで。和田アキ子さんが手に汗をびっしょりかいて全然しゃべらないから、どうしたの?と聞いたら、「ジュリーがかっこよすぎる」って(笑)。独特のオーラがあったわね、あの二人は。
都倉 ジュリーは華がありました。「カサブランカ・ダンディ」で薄化粧をしたときなんて、すごく妖艶でね。あの頃はまだビジュアル系なんて言葉もありませんでしたが、よく似合ってました。
芳村 似合うのよ。ジュリーは最近の騒ぎを見ていて思ったのだけど、昔と全然変わってない。あの頃も何かあったら本気で怒っていたから。そういう真っ当な子なんだけど、色っぽくて華があるんですよね。
都倉 持って生まれたスター性でしょうかね。
「『夜のヒットスタジオ』に出られることが、当時のスターの証でした」―都倉さん
芳村 きっとそうね。百恵ちゃんもデビュー当時からスター性を感じさせました。ヒットスタジオに初めて出る新人さんはみんな、失敗したらどうしようと、一週間前からものも入らず、プレッシャーに押しつぶされそうになっていたのよね。手も氷みたいに冷たくて、震えて。
だから、私は背中をさすりながら故郷の話をしたりして、なんとか緊張を解きほぐそうとしたのだけど、そんななかで、最初から明るかったのが桜田淳子ちゃん。
そして、百恵ちゃんは新人でありながら落ち着いて見えました。内心はそうじゃなかったと思いますけどね。都倉さんたち作り手のみなさんはどんなふうに見てらしたの?
都倉 僕はまだ20代だったから、兄貴分みたいな存在でした。真理さんもヒットスタジオではお姉さん、お母さん役をやってましたが、夢を描いて地方からやってくる中高校生たちが心配でしたね。
つらいのは、一生懸命やってるけど才能がない子たちに対するときでした。ただ、エンターテインメントは歌の才能だけじゃないですからね。多少歌が下手でもほかに魅力があってスターになる場合もあります。それがその子の持つスター性というか、
芳村 カリスマ性というか。
都倉 それを見抜くのも我々の仕事なわけです。百恵ちゃんは明るくはないし地味。でもカメラマンが若い子たちの集合写真を撮るとき、「いちばん後ろのあなた、もっと前に出てきて」と声をかけるのが彼女。気になるんですね。
芳村 音楽プロデューサーの酒井政利さんは、「あなたたちにはこの子の額に光る星が見えませんか?」といったんですってね。酒井さんは南 沙織ちゃんやフォーリーブスなどたくさんの人気歌手を育てた人だから、百恵ちゃんのスター性がすぐにわかったんでしょうね。