役のことを考える時間は、長いに越したことはない
2人の思いを映画にし、公開するためには、「いい脚本を作るしかない」と思っていたという阿部さん。その脚本は練りに練られ、藤井監督は「28稿くらいまで書き直した」と振り返ります。その中で最初からブレなかったのは、主人公が明石という名前のキャラクターであることと、二面性というテーマだったそうで、「軸は変わらなかったですね。物事を多角的に見る大切さというか、誰かの正義は誰かの悪であって……。そういう感覚は、(山田)孝之も監督も僕も持っていたと思います。だから、ブレなかったのかもしれないですね」。
脚本完成までにかけた時間は4年。その間、阿部さんと山田さんがその場で演じ、セリフに生じる違和感を取り除いて、生きた言葉にするという作業を何度も繰り返したといいます。
「4年も5年もかかっていると、早く演じたいという気持ちが出てきますね(笑)。でも、積み重ねた時間は役への理解に繋がっていく。役のことを考えている時間が長くなれば、それだけ役に深く入り込めるので、長いに越したことはないなと思っています」
脚本は作品の「核になるもの」だと阿部さん。「それがしっかりしていれば、賛同してくれる人が集まってくれるかなと思っていました」