考えない時代に考える映画を
善悪の境界線で葛藤を抱えながらも、復讐へと向かう主人公・明石幸次。この役と長く向き合ってきた阿部さんが捉える明石像は、「感情的な人間であるということ」。
「出会う人であったり、起こる出来事にとても感情が揺さぶられる。それを論理的に咀嚼できない、整理がつけられない、感情に任せて行動してしまう。この作品の中で明石はそうあるべきだと思いました。そういう人間であることが、対極にいる三宅(田中哲司)という、とてもロジカルな人間との対比にもなりますし。コントラストが強くなればなるほど、観ている方がいろいろ考えてくれるんじゃないかと思いました」
確かに観賞後、あれこれと考えてしまう本作。ただ、考えても考えても、そこに正解はなく……。“これが正しい答え”と示すわかりやすいものを求め、多角的に物事を考えられず、同調すること・されることで安心を得がちな今の世の中にあって、あえて“考える”作品を出すのはなぜでしょう。
「みんな簡単に答えを求めるし、何か与えてもらったほうがラク。でも、考えることは止まってしまう。だから、この映画が“考える”きっかけになればいいなと思いますね」
「役者はいろいろ整ってから参加することが多い。今回企画から入って、今まで与えられてきた環境により感謝するようになりました」