猫好きがフラストレーションを溜めないように考えたら……
猫にストレスを与えないこと、立体的に撮ること、自然に見えること。岩合さんのこだわりは、まだあります。それが、「猫好きが(上映時間の)約1時間30分、ずーっと座っていられるように」、全シーンに猫を出したこと。
「僕にとっては、『ボヘミアン・ラプソディ』も猫映画(笑)。冒頭から猫が出てくるんですよ。でも、猫がフレームアウトしちゃったら、“あの猫、どこ行ったんだ”、“どうしてんだろうなぁ”って、そっちが気になっちゃって。あと、一体いつ猫が登場するの?みたいな、そういうフラストレーションを猫好きに与えないように、全シーンに。その中で、力を入れて観てほしいところと、ゆったり構えていてほしいところの緩急はつけました」
岩合さんならではのこだわりで、猫好きが観て満足できる仕上がりになっていることは間違いありません。それだけではなく、人間ドラマも重要なところですが……。岩合さんが一番撮りたかったという、大吉(立川志の輔)と息子・剛(山中 崇)のシーン。そこでタマ役のベーコンが「手水鉢(ちょうずばち)に貯まった雨水、つまり島の水を飲むんです。僕が描きたかったことをタマが体現してくれた。アドリブだったんですけど、最高のシーンだったなと思います」。
「志の輔師匠は、恐らく僕より脚本を読み込んで、よく考えられていました。お願いしたのは、肩に力を入れないでということぐらい」