熱狂的にボンダンスを踊るハワイの日系移民の人たちの掛け声は、実は男女間の営みを指すことば。「もともと盆踊りにはそういう側面があるんです(笑)」――見ていても、横山さんには魅かれるものがありました。魅力的だし、おもしろいし、でも筋の通らないことはやらない厳しい人でもあります。避難者のつらさでもあるのでしょうけど、避難先の住民の方々や、同じ避難者に迷惑をかけないようにという気持ちがいつもどこかにあって、自分のためには行動しない人なんです。
――19世紀末に福島からハワイに移住した人たちが伝えた盆唄、盆踊りがフクシマオンド、ボンダンスとして継承されているのを見て、横山さんたちは衝撃を受けていましたね。映画のなかでも話していますが、ボンダンスは別の進化だとおっしゃっていました。あんなに大勢踊り手がいるのは、ハワイではボンダンスが芸能として息づいているということです。日本では、盆踊りに参加するのは年配の方々が主で、景品などを用意しないとなかなか踊り手が集まらないのに、ハワイではあんなふうに熱狂的に踊られ、みんながボンダンスを楽しみにしている。そのことに衝撃を受けたようです。
――ただ一度の滞在では、ハワイのみなさんに双葉町の盆唄を会得してもらえるものではない、と。ことばの問題もあるし、たしかに唄は難しいですけど、実は太鼓もかなり難しいと思います。編集では外しましたけど、横山さんは最後、「マウイ太鼓」の世話人で日系3世のケイさんに、「太鼓を早くしないでね」といって帰ったんです。僕は音楽がすごく好きで、そばにいたから何となくわかるのですが、西洋音楽で育っているハワイのメンバーは、ジャストで太鼓を打つけれど、横山さんの太鼓にはタメがあって、音をずらすんです。ビートに乗って太鼓を打つのは気持ちがいいからどんどんテンポがアップする。でも、ビートに乗らないことで、グルーヴや爆発的なものが生まれるわけで。