慢性の強い痛みがあるとどの疾患でも死亡率が上がる
2013年、滋賀医科大学医学部附属病院は全国に先駆けて難治性慢性痛に対応する「学際的痛み治療センター」を開設しました。同センターは厚生労働省「慢性の痛み対策研究事業」において設置された拠点病院の1つです。
18年現在、同病院を含め、全国22の大学病院に難治性慢性痛の診療拠点となる治療センターあるいは専門外来が置かれています。
最も不快な症状である痛みは「急性痛」と「慢性痛」に分類されます。突然の病気やけがなどが原因で起こる急性痛は体の警報システムとしての役割を持ち、脳が痛みを感じることによって傷ついた部分の安静を保ったり修復を促したりします。
一方、慢性痛は炎症や関節の変形、神経の損傷などをきっかけに生じた痛みが何らかの原因によって慢性化した状態で、痛みに敏感になっている脳の中枢神経系システムが引き起こすと考えられています。
「慢性痛を長引かせる、あるいは難治化させる原因としては、侵害受容性要因(炎症、関節の変形、軟骨の変性による痛み)や神経障害性要因(中枢神経や末梢神経の損傷による痛み)のほか、感情やストレスなど心理社会的要因も大きく影響します。
また、姿勢の悪さなど生活習慣による機能的要因も慢性化の原因として見逃せません」と同センターを率いる福井 聖先生は解説します。
3か月以上続く痛みのことを慢性痛といいますが、長期間にわたる痛みは日常生活に大きなダメージを与えます。痛みで食事や睡眠が満足にとれなくなることに加え、学校や仕事にも行けなくなり、引きこもる人がいます。
また、意欲や集中力が低下し、前向きに考えられなくなって精神的に追い詰められる人も少なくありません。
「米国の研究では強い慢性痛がある人は痛みがない人に比べて全疾患で死亡率が上がることがわかっています。痛みが続くことは生命を脅かすほど実は危険なことなのです」と福井先生はいいます。