慢性痛は働き盛りに最も多く経済的損失の大きさも問題に
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、成人女性が悩まされる慢性痛のうち最も多いのが肩こりです。次いで腰痛、手足の関節痛、頭痛と続きます。
この調査からもわかるように慢性痛でよくみられるのは運動器疾患による痛みで、男女を問いません。しかし、意外なことに高齢者に多いというわけではないのです。
福井先生によると、30~50代の人が最も多く、しかも大都市で生活する専門職などのデスクワーカーに多いといいます。
「日本では運動器疾患による慢性痛患者の10パーセントが就学・就労を制限されているという報告や、294万人の有職者が痛みのために1週間以上休業したという全国調査があります。労働人口が減少する中、慢性痛は働き盛りに多いため、経済的損失にも直結することが問題視されています」
一方、働き盛りの世代に比べると患者数は少ないものの、慢性痛は高齢者にも深刻な状況をもたらします。
「痛みがあると要支援・要介護状態になりやすいことが明らかになっています」。こうした背景のもと、日本でもようやく慢性痛に特化した専門治療が行われるようになりました。
痛み治療の専門家が多面的に評価し、チームを組んで診断と治療方針を検討
関西地区の診療拠点の1つである同センターには地域の医療機関から慢性痛に苦しむ患者が紹介されてきます。
「痛みが続くと、脳の痛みを感じる中枢神経系がおかしくなるため、軽症のうちに治すことが重要ですが、10数施設を回ってもよくならず、難治化している患者さんが紹介されることも多いです」と福井先生は実情を話します。
治療するのは、慢性の腰痛や頸肩腕痛といった運動器疾患による痛みだけでなく、帯状疱疹後の神経痛、手術後の痛み、原因不明の全身痛、慢性頭痛、がんの痛みなど慢性痛全般を対象としています。