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親の“お迎え”が近づいたとき、家族と医師で支える最終段階の過ごし方

2019.02.15

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親の最終段階を支えるためのケーススタディー


イラストレーション/平松昭子

ケース(1)
親と最期の過ごし方について話すことをすすめられたが、切り出し方がわからない


Aさんの父は年の割にしっかりしていたのですが、90歳を超えるとさすがに体力が落ち、歩行も食事も不自由になってきました。


物忘れも進み、辻褄の合わない会話も増えてきて、同居のAさんも目が離せなくなっています。かかりつけ医から「そろそろ人生の最終段階の過ごし方を話しておいたほうがよいでしょう」といわれました。

Aさんも、意思疎通ができるうちに父と話しておかなければと思っていたのですが、いざとなると、亡くなることが前提の話を本人に持ちかける勇気がなく、なかなか切り出せずにいます。

【患者の心得】
“たまたま”のタイミングに便乗。一度で深くまで話そうとしない


「これは縁起でもない話だ」とわきまえたうえで、自然の流れで重くならず話すことが大事です。

何気ない会話の中で本人から「お迎え」という言葉が出たときやテレビでその話題が流れたときなど共通の下地ができたタイミングに便乗して、「お父さんのときはどんな感じで過ごしたい?」とさらりと持ち掛けてみるのも手です。

相手の反応をみながら、心の準備が不十分だと感じたら一旦引っ込め、1度に深いところまで話し込まない気遣いも必要です。

また、何を望むかよりも嫌なことやしてほしくないことを尋ねるほうが本人もイメージしやすいかもしれません。

ケース(2)
人工呼吸器はどうしますか?と、医師に聞かれたが親と家族の思いが異なる


Bさんの母親(93歳)は3年前に骨折して寝たきりになってから、認知症もかなり進んでしまいました。

同居のBさんが自宅で介護を続けていたのですが、体力が落ちていたところに肺炎を起こし、緊急入院をすることになりました。

意思疎通もままならず、一時的に自力での呼吸が難しくなり、Bさんは医師に「人工呼吸器はどうしますか」と尋ねられました。

母親はかねがね「延命治療はしたくない」といっていたのですが、Bさんは今この場で人工呼吸器をつけない選択をすることに大きな抵抗を感じています。

【患者の心得】
家族として、そして代弁者として、“2つの声”を正直に伝える


前もって本人の意思を聞いていたとしても、いざ直面すると家族がそのとおりに決断できないことはよくあります。

まず、医師の専門的な見解を聞く。そのうえで「母は延命治療は望まないといっていました。でも私は、そのような結論を出してしまうと自責の念にかられる気がします」と2つの声を正直に伝えながら、医師と合意形成をしていくのがよいと思います。

状況によっては人工呼吸器の装着によって一時的な呼吸困難が改善し、状態が安定する場合もあります。「延命治療はよくない」と単純に決められるものではないことは知っておいたほうがよいでしょう。

ケース(3)
リビング・ウイルは必要か?


Cさんは親の生前意思をリビング・ウイルで残しておくべきか迷っています。

【患者の心得】
文字で書くより“スマホで録音”


文書の影響力は想像以上に大きく、内容が独り歩きしたり、医師が過剰に縛られてしまう弊害があります。

私(尾藤)は、そのような話になったときに、ご本人の許可を得てスマホなどで録音することをすすめています。

会話の流れや言葉を発した背景など微妙なニュアンスが残り、後で医師が聞いたときに思いをより確実に理解できますし、声紋で本人と証明できる利点もあります。

尾藤誠司(びとう・せいじ)先生

尾藤誠司(びとう・せいじ)先生

1965年、愛知県生まれ。
岐阜大学医学部卒業後、国立長崎中央病院、国立東京第二病院(現・東京医療センター)、国立佐渡療養所に勤務。
95年〜97年UCLAに留学し、臨床疫学を学び、医療と社会とのかかわりを研究。
総合内科医として東京医療センターでの診療、研修医の教育、医師・看護師の臨床研究の支援、診療の質の向上を目指す事業にかかわる。
著書に『「医師アタマ」との付き合い方』(中公新書ラクレ)、『医者の言うことは話半分でいい』(PHP)ほか。
お医者さまの取扱説明書
遠くの大病院より近くのクリニック患者が考える救急と医師にとっての救急の違いとは?初診・医師にはじめて会ったとき「どうしましたか?」にどう答えるか医師の「風邪ですね」に込められた本音「病名さがしの旅」という名の検査レール、本当にすべて必要なの?検査結果の数値に振り回されない患者の心得とは「隠れ病気」をどうとらえるか。“病気らしいもの”が見つかってしまったら医師が「大丈夫」というとき、いわないとき。医者の説明がちんぷんかんぷん、そのとき患者がすべきこと医師にいうのは要注意「治療法は(わからないので)お任せします」「薬」が増えるカラクリ、減らすコツ入院生活の不安・ストレスをできるかぎり減らすコツ家族が認知症。周囲と医師にできること医師はなぜ、代替療法をうさん臭いと思うのか親の“お迎え”が近づいたとき家族と医師で支える最終段階の過ごし方セルフケアと医療で対応する「具合の悪さ」セカンドオピニオンを誤解していませんか?できるだけ不安なく手術を受けるために、手術にまつわる確認事項エトセトラ「かかりつけ医」の役割と見つけ方親の介護に直面。医師に何を頼れるか?どこまでが介護で、どこからが医療かその“検索方法”は正しいか!? 信頼できる医療情報の求め方と生かし方医療は“役割分担”。共通の目標を持ち、各々のto-doを定める
取材・文/浅原須美 撮影/八田政玄 イラストレーション/平松昭子

「家庭画報」2019年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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