日本各地の職人の皆さんのご協力のもと、伝統工芸の粋を尽くした本誌オリジナルの暮らしの品をご紹介してきた本連載。最終回を飾るのは、山形鋳物で作られた蓋付きの両手鍋です。
鋳物の鍋は熱伝導率が高く、利点が多いのですが、鉄の特性上、「重い」「形がどっしりとしている」「用途が限られる」などの印象を持たれることも多いようです。そんなイメージを払拭してくれる鍋です。
春の集いの食卓には鴨鍋を。じか火だけでなく、IHにも対応。漆取り皿、漆箸/山田平安堂口径約23センチ、深さ約7センチの鍋は、2~3人分の鍋料理に適した大きさ。胴体から流れるような曲線でつながっている取っ手は、下に向かって縁が丸まっているので持ちやすく、具材が入って重みが出ても安心して運べます。
鉄製の密閉度の高い蓋が付属し、オーブン料理にもおすすめ。春野菜と魚の蒸し焼きなど、そのままテーブルにお出ししたいおもてなし料理にも活用できます。
曲線で構成されたデザインは、あたたかみがあり、すっきりとシンプル。洋食器にも調和し、テーブルコーディネートの幅が広がる。そして、最も特筆すべき魅力が、おいしく簡単にご飯を炊けること。製作のアイディアを提案してくださった料理研究家の中村奈津子さんも、「羽釜で炊くご飯は最高においしいものですが、その味に匹敵します。
熱伝導率が高くて伝わり方にむらがなく、重みのある鉄の蓋でしっかりと密閉して圧力がかかるからでしょうか。2~3合がおすすめの分量です」と太鼓判を押します。お手入れも簡単で、洗った後にしっかり水気を拭き取って乾燥させれば長く使えます。
一緒に考えてくださったかた
中村奈津子さん(なかむら・なつこ)さん
料理研究家。香港、ニューヨーク、イタリアなどで各国の料理を学ぶ。母が開校した「田中伶子クッキングスクール」校長を務め、伝統に根差しながらも時代に即した家庭の味を提案。