【特集】あの最高峰時計はなぜ愛されるのか? 家庭画報.comが最高峰時計ブランドの“愛される理由”を徹底分析。各ブランドから、歴史や性能を楽しめる「入門時計」、私のスタイルにフィットする「定番時計」、いつかは欲しい「夢時計」の3本をご紹介します。
特集トップはこちら>> 「ジャガー・ルクルト」とは――
「ジャガー・ルクルト」の歴史は、アントワーヌ・ルクルトが1833年にスイスのジュウ渓谷で設立したアトリエから始まります。創業当初からデザイン、部品から組み立て、装飾などに至る180種の技術を持つ職人たちが一つ屋根の下に集い、時計が完成するまでに必要な一つひとつの工程を自社で行うマニュファクチュールという形態をとっていました。
1903年、アントワーヌの孫のジャック=ダヴィド・ルクルトは、パリの時計職人であるエドモンド・ジャガーと出会い超薄型懐中時計の開発に着手。1907年に世界最薄のポケットウォッチ、1928年には空気を動力源とする半永久機械式置き時計「アトモス」、1929年には世界一小さな機械式ムーブメント「キャリバー101」と立て続けに発表し、「ジャガー・ルクルト」の名を不動のものにします。歴史を継承した時計は今でもジャガー・ルクルトの定番コレクションに含まれおり、創立以来、高い精度と複雑機構のパイオニアとして1200個以上のキャリバーを生み出し、“グランド・メゾン”という異名で知られています。
1929年「ジュワイアリー101」と名づけられたレディスモデルは世界最小の機械式ムーブメント「キャリバー101」を搭載し、長さ14mm、幅4.8mm、そして厚みはわずか3.4mm。最高に美しいダイヤモンドを纏い、特別な女性の手首を輝かせました。イギリスのエリザベス女王は1953年の戴冠式において、その手首に「ジュワイアリー101」をつけています。1929年以来、「ジュワイアリー101」はマニュファクチュールの最高の職人によって小さなサイズが継続的に製造・改良されており、上記写真の「101レーヌ」のキャリバーは第4世代にあたります。名品「レベルソ」の誕生
男女共に人気の高い「レベルソ」(1931年誕生)は、“反転式”スタイルで有名です。これは1930年代の初め、インドに駐在していたイギリス人将校から、ポロの試合中の衝撃に耐え得る腕時計の開発を依頼されたことに由来します。ケースを反転させればダイヤルを格納すると同時に裏面が現れ、スティックによる衝撃からダイアルを守る、このユニークな発想で唯一無二のタイムピースが誕生したのです。
1931年誕生当時の「レベルソ」と広告ポスター。このポスターにも男女のイラストが登場しており、当初からユニセックスの時計でした。最新の「レベルソ・クラシック」コレクションは“美しい時計は万人のものである”というブランド哲学のもと、男女兼用のアイテムとして作られています。ジュエリーモデルのように女性らしさを全面に出すこともあれば、際立った複雑さと外観から男性らしさを醸し出すモデルもあったり、表裏異なる雰囲気のフェイスデザインを楽しめたり、とデザインは多様。男女を問わず、その日の感覚で時計を楽しめる、豊かな二面性を持つ「レべルソ・クラシック」は、とてもユニークかつ実用的で長く愛されています。
レベルソの裏蓋に好きなエングレービングを施すパーソナライズサービスが人気です。小さなディテールを正確に彫るために、エングレーバーは12本ほどの様々なサイズのタガネを使います。「ジャガー・ルクルト」は10年以上にわたり、ヴェネツィア国際映画祭や上海国際映画祭など、優れた芸術性を誇る世界中の映画祭に協力。ヴェネツィア国際映画祭ではメゾン独自の「監督・ばんざい!」賞を制定し授与することで、映画監督のクリエイティブな才能に敬意を表しています。2018年にはチャン・イーモウ監督が受賞。日本人では北野武監督が受賞しています。 表示価格はすべて税別です。 撮影/サトウアサ 取材・文/磯 由利子 スタイリング/長谷川 綾