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詩人の再読の書。伊藤比呂美さんが異国の地でも手に取った、この3冊(後編)

2019.04.09

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いっぱい育てたが、いっぱい枯らした。この手でちょきんと根や蔦を切って、生を断ったものもいっぱいいた。家の中に観葉植物として置いておくかぎりは、ある程度の状態以下になったらあきらめて、捨てる枯らす殺す、その行為に及ばざるを得ないことを、日々の実践の中で知った。
その頃だ。私が植物の法を見極めた。植物と、人間もふくめた動物たちとの、生き方死に方の違いである。植物は死んでも死なない、死ぬは生きるであり、生きるは死なないということだ。

(『木霊草霊』 「バオバブの夢」より)

 

――『河原荒草』と姉妹のような作品が『木霊草霊』で、草木への愛や執心が伝わってきます。

『木霊草霊』も大好きな作品です。これが草心で、対になっているのが『犬心』。『木霊草霊』では戸外の植物のことを書きましたが、室内園芸にはまっているときに書いたのが『ミドリノオバサン』です。その後、親の介護が始まってから手をかけられなくなっていましたけど、去年、日本に戻ってから熊本の家に、まただいぶ植物を増やしています。

――『木霊草霊』では、植物は死んでも死なないということを書かれています。

本当に植物はすごいですよね。先っちょを取って挿し木にしたり、死んだかなと思ったものも、部屋に入れて面倒をみると生き返るし。植物はおもしろいし、気になる存在で、学び直すなら、植物のことを勉強したいです。植物と動物や人間は違うと思っていたけれど、自分の身近な人が亡くなってみたら同じかな、という気もしています。死んだら肉体は滅びるけれど、距離を置いてみると、死はいろいろなものと作用し合って巡っている。別に輪廻転生を信じているわけではないけれど、自分の理解を超えた大きな流れのなかにいる……というのかな。



左上から時計回りで。『切腹考』(文藝春秋)、『木霊草霊』(岩波書店)、『河原荒草』(思潮社)、『とげ抜き 新巣鴨縁起』(講談社文庫)。

――ところで、伊藤比呂美さんといえば朗読です。あの語りの強さは、練習で体得できるものではないのかな、と。

いや、練習じゃないですか。何回もやっていれば、慣れてくるものですし。私は朗読が好きで、フレディー・マーキュリーのようになりたいと思っている(笑)。ただ、初めからセンスのいい子はいますね。大学のクラスでも、えっ?と思う子はいます。下手だし、恥ずかしがっているけれど、身体が変に傾きながら動いて、リズムを取っていたり。

――学生の詩を読んで、どんなことを感じますか。

時代性とかそういうものはないですね。ジェンダーでいうつもりはないけれど、女の子は自分の半径5mくらいのことを書くのに対して、男の子はもうちょっと広い。何でこんなところで、と思うところで違いが出ている。女の子って、自分をていねいに解剖して、分析していくんです。そしていったんそれができるようになると、その解剖していく手つきがおもしろい。詩はまだ下手だけれど、詩って下手じゃなきゃだめというか、上手くなると読めない。ある意味、この子たちの下手さ、無謀さは武器になっている。それは彼らのホルモンが出ているわけで、今の私には逆立ちしても書くことができません。
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