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詩人の再読の書。伊藤比呂美さんが異国の地でも手に取った、この3冊(後編)

2019.04.09

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●伊藤比呂美さんの再読の書
現代詩の傾向について尋ねると、“自分のことしか考えてこなかったので、申し訳ないけどよくわからなくて……。現代作家の作品を読み始めたのは大学で教えるようになってからです”という答えが返ってきたように、長い海外生活のなかで、古典ばかり読んできたという伊藤さん。自身で現代語訳を手がけてきた伊藤さんが繰り返し手に取るのは、やはり自身の創作と結びつきのある本だという。




『新潮日本古典集成 説経集』/室木弥太郎編(新潮社)

『説経集』はおもしろいですよ。とにかくめちゃくちゃ。能はもっと、語りとことばがつながっていて、いろいろなところから引用しているので、文学的ですっきりしている。説教集は能のあとに出てきたもので、社会の底辺で生きる人たちが語り歩いたものなので、話の内容がむちゃくちゃおもしろいんです。これをもっと人に受けるものにと、華やかにしたのが歌舞伎や浄瑠璃です。説経集で描かれる女は強くて、よく働く。女の人生がそこに凝縮されている感じですね。

『鷗外選集16巻』 森 鷗外(岩波書店)

鷗外の何が好きかというと、やはり文章です。16巻には『聖ジュリアン』が収録されているんですけど、“鷗外先生、説教節じゃないですか”と思ったのが『聖ジュリアン』で、私の鷗外と説教節への興味が合わさっている作品です。

『切腹の話』 千葉徳爾(講談社現代新書)

1980年頃、この本を読んだことが切腹に興味を持ったきっかけです。友達で本当にやっている人がいて、その人の話を聞いているとすごいなと思うけれど、自分にはできません。切腹への興味はいってしまえばファンタジーで、だから腐女子の気持ちはすごくよくわかります。あと、切腹はある意味、演技じゃないですか。私は虚構をつくることはできるけれど、演技的なことはまったくだめで、朗読についても、演技をするなと学生に教えています。『切腹考』は、周囲から理解されないかもしれないけれど、自分の興味をそのまま書きたいと思って、担当編集者にぶつけるように書いた作品でした。

早稲田にて

伊藤比呂美/Hiromi Ito

詩人
1955年東京都生まれ。78年に詩集『草木の空』でデビュー。同年、現代詩手帖賞を受賞。『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』で萩原朔太郎賞、紫式部文学賞を、『河原荒草』で高見順賞を受賞。『良いおっぱい 悪いおっぱい』で育児エッセイという分野を開拓。『新訳 説経節 小栗判官・しんとく丸・山椒太夫』や『読み解き「般若心経」』など、古典や経典の現代語訳を手がける。著書・共著・訳書多数。近著に『ウマし』『たそがれてゆく子さん』『先生、ちょっと人生相談いいですか?』など。

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取材・構成・文/塚田恭子 撮影/大河内 禎
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