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まだ間に合います。寒い京都の味といえば、ほかほかのかぶら蒸し

2019.02.27

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随筆家 大村しげの記憶を辿って 私だけの京都へ 第30回「一平茶屋」

随筆家 大村しげの記憶を辿って かつて、京都の「おばんざい」を全国に広めたお一人、随筆家の大村しげさんをご存じでしょうか。彼女が書き残した足跡を訪ねて、生粋の京女が認めた京都の名店や名品を紹介します。記事一覧はこちら>>
京都を旅するにあたり、京都ならではの場所や味に出会うために、私たちはなにを拠り所とすればよいのでしょうか。京都の情報を多数書き残した、随筆家・大村しげさんの記憶は、まさに京都を深く知るための確かな道しるべ。今回も彼女にまつわる名店を辿ります。

大村しげ大村しげ
1918年、京都の仕出し屋の娘として生まれる。1950年前後から文筆をはじめ、1964年に秋山十三子さん、平山千鶴さんとともに朝日新聞京都版にて京都の家庭料理や歳時記を紹介する連載「おばんざい」を開始。これをきっかけに、おばんざいが知れ渡り、大村しげさんも広く知られるようになる。以来、雑誌や著書で料理、歴史、工芸など、幅広く京都の文化について、独特の京ことばで書き残した。1990年代に車いす生活となったのを機にバリ島へ移住。1999年、バリ島で逝去。 撮影/土村清治

四条大橋から南へすぐの名店


京都のランドマークのひとつが四条大橋です。その周辺には新旧さまざまなお店が立ち並び、地元の人・観光客の双方にとって欠かすことのできないエリアとなっています。そんな四条大橋の東側のたもとから南へすぐの場所にあるのが、一平茶屋です。大村しげさんは、こちらをかぶら蒸しの名店として紹介しました。


かぶら蒸しはすりおろした蕪(かぶ)を具の上にのせて蓋付きの茶碗に入れて蒸し、別に作ったあんをかけた料理。一般家庭、料理店を問わず作られてきた、寒い季節の京都の味です。

一平茶屋 大村しげの記憶を辿って昔ながらの風情を感じさせる一平茶屋の佇まい。軒先に見える行灯にはちょっとした逸話があります。それは後ほどご説明を。

「外は小雪のちらつく夜でも、かぶら蒸しに舌つづみを打っていると、寒さを忘れる。(中略)かぶら蒸しというて、すぐに思い当たるのは川端(※)の一平茶屋である」(『美味しいもんばなし』鎌倉書房)。
※川端通のこと

 

大村しげさんの愛したかぶら蒸し定食


大村しげさんは1987年発行の『美味しいもんばなし』のなかで一平茶屋のかぶら蒸し定食について詳細に記述していました。

一平茶屋は当時の姿でいまも同じ場所にあり、地元のごひいきが多いお店です。4代目店主の佐々木公平さんによれば1928年(昭和3)に現在の場所に移転してきたとのこと。それ以前は祇園の切り通し付近にお店を構えており、大正時代には創業していたとされます。

「ひと塩のぐじ(甘だい)、焼いたうなぎ、鶏、ゆりね、生しいたけがはいっていて、かぶらには道明寺粉がまぜてある」

「おきまりは、そこへお造りと口取り、ご飯、香の物がついていて」(ともに『美味しいもんばなし』)

一平茶屋 大村しげの記憶を辿ってかぶら蒸しはわさびをのせて、崩しながら食べるのがおすすめ。かぶらの柔らかな舌触りと風味、ぐじ(甘鯛)と鰻などのしっかりした味つけで、京都人に愛されているのも納得です。写真にごはんと香の物のついた、かぶら蒸し定食は4320円(税込み)。

道明寺粉を使うほかにはない、かぶら蒸し


うれしいことにかぶら蒸し定食は、30年以上経ったいまも当時のまま。一般的なかぶら蒸しは、つなぎとして片栗粉や卵白を使います。が、一平茶屋では道明寺粉を使っているのが特徴です。

「そやから、家で卵白をいれて作ったのとは、ひと味もふた味も違う」(『美味しいもんばなし』)と、京の味を知り尽くしていた大村しげさんも太鼓判を押しています。執筆の傍ら、カルチャースクールでおばんざい教室の講師をしていた大村さんは、授業のあと生徒たちとともに、しばしば一平茶屋で食事を楽しんだそうです。そこには、本物の京都の味を知ってほしいとの思いがあったに違いありません。
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