舞台『真田十勇士』(2013年)では、立ち回りもある隠密役を見事に演じきった。――題材は、民主化を求める一般市民と中国政府が衝突した1989年の“天安門事件”。そこに居合わせ、戦車の前に立ちはだかる一人の男性の写真“タンクマン(戦車男)”を撮った米国人の報道写真家ジョーは、20数年後に知ったその写真にまつわる事実を追い始めるが……という物語が、時と場所を行き来しながら描き出されます。「冒頭まさに、その天安門事件に居合わせたジョーの描写から始まるんですが、稽古を見ているだけで、自分がタイムスリップして本当にその場を目撃しているような感覚になります。ネットで調べたり資料で読むよりも、ずっと事件のことが事実として深く入ってくるというか。その後の中国政府の対応や状況も、そこまで書いちゃって大丈夫なの!?とドキドキするくらい、登場人物達の会話の中に出てくるんです。“演劇の力”というものを、改めていろいろな意味ですごく感じています」
――倉科さんが演じるのは、田中 圭さん演じるジョーと、北京へ向かう機内で出会う英国人テス。タフさと繊細さを併せ持った魅力的な女性です。「これまで演じたことがないような役柄で、新鮮で面白いです。とてもやりがいを感じます。ただ、役づくりをしていくのは本当に大変(苦笑)。どれだけいい作品で、いい役かということも十分わかっているので、プレッシャーもありますし、どうしても気負ってしまって。とりあえず気負ったまま稽古していって、それを一度壊したところから、また新たにアプローチするしかないなと思っています」