第8回
呉服屋さんに伺いました「タンスのきもの、寝た子を起こそう」
きものに興味を持ち始めると、色んなきものが着たくなりませんか?
私、E子もその一人でございます。
読者の皆様をお招きしたイベントでは、華やかな訪問着のお姿に心奪われ、取材で先輩エディターさんが着ていたモダンな紬に視線が釘付けになり、きれい色を楽しんでいる編集長のお姿にうっとりし……。
嗚呼あれもこれも着てみたい!
そんな気持ちで日々を過ごしていた帰省のある日、実家のタンスに目がいきました。
歳月を感じるたとう紙を開けてみると、母が昔に着ていたきものがぐっすりと眠っているではありませんか。きもの所有数の少ない私にとって、タンスのきものはまだ見ぬお宝の山でございました。
ですが悲しいかな、中にはきものの柄がよくわからなかったり、サイズが合わなかったりシミがあったり。せっかくのきものを前にして悩んでしまいました。でも、母がこれまで大切に保管してきたきものです。せっかくなら着てあげたい。
そんな時は呉服屋さんへGO!でございます。
タンスで寝ていたこの子たちを胸に抱き、再び行ってまいりました「きもの工芸 大黒屋」さん。
着ていい季節が分かりません
「花の名は」
縮緬地には加賀友禅らしく控えめに白いお花が描かれています。まずは加賀友禅の付け下げです。色も柄も落ち着きがあって気に入っているのですが……。なんのお花か分かりません。
“季節に合わせたきものを着ましょう”という言葉が脳内でリフレインします。
花の種類が分からなかったら着られない!?
西川さん(以下、敬称略):「これは……菊でしょう。意匠化(図案化、デフォルメされていること)されているから分かりにくいですよね。そういう時は葉を見るといいですよ。花は抽象的に描かれていても、葉は割と素直に描かれていることが多いんです」
……数秒で解決してしまいました。
E子:「お花の種類は分からなかったのですが、少し色づいた葉があったので、紅葉シーズンに楽しんでいました」
西川:「そのご判断で問題ありませんよ。着たら堂々としていましょう。何か尋ねられたら『母からもらったきものなので、たくさん着てあげたいと思っているんです』とお伝えすればお相手も理解してくださるはずです」
ここでも魔法の言葉を教えていただきました。