ちょっと恥ずかしい!?
大人の(派手な?)ピンク問題には解決策がたくさん
とても好きな色ですが、全身ピンクになっちゃう!?と考えると躊躇ってしまいます。お次は赤みの強いピンクの江戸小紋。四十路を過ぎた私が全身この色を身にまとうなんて!?
西川:「実は色に関してのご相談はピンクと朱赤がとても多いんです。大抵はご本人が気にされるほどではないのですが、満足して着ていただくためのご提案はいくつかございます」
いくつか解決策があるという心強いお言葉。
西川:「きものは帯によって雰囲気が変わります。昔の帯と合わせるとどうしても派手さが際立ってしまうんですよね。現代の帯と合わせるだけで随分とモダンな装いになりますよ。この江戸小紋のきものなら、シックな黒地の帯と合わせてはいかがでしょう。ご自宅に思い当たる帯があればぜひお試しください」
色や柄の華やかなきものは抑えめの色の帯で引き算をする。もしかして帯揚げや帯締め、草履など合わせる小物も考え直してみると、色で悩んでいた他のきものも着られるようになるかもしれません。なるほど……。取材中ではありますが、早く家に帰って試してみたくなりました。
西川:「あとは八掛(袷のきものの腰部から下についた裏地のこと)を変えるというのもひとつです。このきものでは赤を使っていますが、落ち着いた色にすると雰囲気が変わります。きものと同系色の落ち着いた色を選ぶといいと思います」
E子:「八掛の色見本を当てただけで雰囲気がずいぶん変わりますね。あの西川さん、濃い紫にも合わせてもらっていいですか? あ、こげ茶はどうでしょう」
「このきもの(江戸小紋)でしたら深い赤紫もいいですね」(西川さん)八掛の色によって雰囲気の変わるきものを前に、どんどん楽しくなってまいりました!
西川:「それでもやはりきものの色が気になってしまうというお客様には“染めかけ”をご提案しています」
E子:「染めかけ、ですか?」
西川:「はい。現状のきものの上から他の色をのせて染めるんです。グレーや茶系など落ち着いた色で染めると渋くてカッコいいですよ。もちろん、一度染めてしまうと元には戻りませんから、いきなり染めるのは勇気がいります。袖や裾などの縫い込み部分やお仕立て時の端切れを少しいただけたら、まずはそこで試し染めをしてお見せすることができます」
実際にお客様が依頼された試し染めを見せていただきました。どちらも愛らしい娘さんカラーが、灰桃色の落ち着いた雰囲気に。こんなにもきれいに色が染まるのですね。西川:「ご依頼のきものは年月が経っていることが多いので、まずは洗い張り
(※詳しくは前回の「きものワード」をご覧ください)をします。それから染めかけの作業になります。ほどいた状態になりますから、お客様のサイズに合わせてお仕立てし直すことができるんですよ。これで色だけでなく、着丈や裄などのサイズ問題も解決します。また、きものではなく羽織やコート、道中着にされる方もいらっしゃいますよ」
「元々が濃いお色ですと、染めかけが難しいこともあるのでまずは相談してみてくださいね」(西川さん)E子:「洗い張りをすることで汚れを落とし、さらにはぴったりの寸法できものや他のものに仕立てられるなんて。どんどん自分好みにカスタマイズできるというわけですね!」
西川:「なるべくならそのままの状態で着られるのがいいと思うんです。でも難しいこともありますよね。うちは私だけではなく、先代である父やその代からの社員もおります。代々の知恵まであるのは、やはり専門店ならではだと思います」
早速、西川さんのアドバイスを受け、江戸小紋に黒地に金の箔の名古屋帯を合わせてみました。帯揚げや帯締めもできる限り色のトーンを抑えてみたのですがいかがでしょう。その後、先輩エディターMさんには、
「明るい色のきものはもっともっと年齢を重ねたとき、また似合う時期が来るものなのよ」というアドバイスをいただきました。
すぐに楽しみたいのであれば染めかけをするもよし、長い年月を経てからのお楽しみを待つなら帯など合わせる小物で工夫するもよし。きものの楽しみ、計り知れません!
ご実家に眠っているお母様やお祖母様のきものの数々。そのまま着られなくて悩んでいるきものはございませんか? 実はいろいろな解決策があるようです!
これで安心してタンスのきもの、起こしてあげられます。
構成・文/笹本絵里 中島敦子 ※この連載で取り上げて欲しい、皆さんの「いまさら聞けない」きものの基本&疑問をぜひ お聞かせください! 件名「イチから始めるきもの道」と明記し、メールにてお寄せください。 E-mail:k-salon@sekaibunka.co.jp