日本が誇る伝統工芸に携わるかたがたとともに製作した、現代の暮らしを豊かに彩る家庭画報オリジナルの逸品をご紹介します。
撮影/本誌・鈴木一彦
夏の盛りに向けて木々の緑が日ごとに濃くなる頃、竹で編んだ花入の凜としたたたずまいに涼を感じるものです。今回、床の間のような和の空間はもちろん、リビングやベッドルームなど現代の住空間に寄り添うモダンな竹の花籠を生み出しました。
やや小ぶりに作られた花籠は主張しすぎることなく空間になじみ、底に向かって少し膨れるように編んだ花籠の曲線が優美です。「リビングでも、玄関でも、ベッドルームでも……。洋の空間に似合うモダンな花籠があれば、と思っていました」と話すのは、今回の製作のアイディアをご提案くださった藤田京子さん。「花籠に取っ手をつけることでまた趣が変わり、活ける花によってさまざまに楽しめます。取っ手は簡単に取り外せるので使いやすいですね」。
花籠の中にお好みの器を入れて活ければ、編み目の隙間から器がちらりと覗き、染付やガラス器、漆器にシルバー……と、季節に合わせて花と器の取り合わせの楽しみも広がります。
取っ手を外して、ダイニングテーブルのセンターピースに。ビバーナムや蘭などグリーン系で統一し、こんもりと可愛らしく活けて。
一緒に考えてくださったかた
藤田京子さん(ふじた・きょうこ)さん「レフレシール」代表、デコラトリス。食空間プロデューサー木村ふみ氏に師事後、渡仏しジョルジュ・フランソワ氏に師事。7年半のパリ、6年の京都暮らしで培った美意識を、花を通じて表現。日本を代表するフローリストとして幅広く活躍。
別府竹細工の繊細な美が洋間にも合うモダンな花籠に別府竹細工の起源は、『日本書紀』によると、十二代景行天皇が九州遠征の際に立ち寄り、お供の者が別府に良質のシノダケが群生していることを発見し、めご(茶碗籠)を作ったことが始まりといわれています。江戸時代には、温泉地として別府の名が全国に広まり、各地から訪れた湯治客に向けためし籠やざるなどの生活用品が多く作られるようになり、竹細工は別府の地場産業として定着しました。現在では、日本唯一の公立の竹工芸専門訓練校が作られ、別府竹細工に魅せられた生徒が全国各地から集まり、その技を受け継ぐべく切磋琢磨しています。
別府で産出する竹は、弾力性に富んだマダケが主。乾燥させた竹を、ごく細い竹ひごに裂くことから職人の仕事は始まります。花籠は、底から胴に向かって編み上げていきます。何十本の竹ひごを操りながら、全体の形や編み目が歪まぬように注意しながら編み上げるには、職人の腕が問われます。整然と整った編み目の繊細な美しさは、別府の地で守られ続けてきた技の結晶です。
テッセンなど蔓物を取っ手にからませて。細いワイヤーで目立たぬように固定すれば簡単に活けられる。
籠や手提げ、蓋物など、現代の暮らしの道具を通して用の美を追求する。編み方には約200種類以上あるといわれている。
作りたい作品に合わせて竹ひごの太さや編み方を変えながら、編み上げていく。花籠は「差し六ツ目編み」と呼ばれる技法で編んでいる。
家庭画報×別府竹細工花籠のご購入方法
「花籠」縦13×横17×高さ(取っ手含む)35センチ 2万円(税抜き、送料別)。購入をご希望のかたは、一木律子さんに直接ご注文ください。
一木律子さん
MAIL:
fukurou@trad.ocn.ne.jp※ご注文が確定してから製作するため、商品のお届けにはお時間がかかります。また、商品は一つ一つ手作りのため、仕上がりが写真とは少々異なる場合があります。
『家庭画報』2017年6月号掲載
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。