レッドカーペットに似合う新感覚のバッグを目指して和洋の美意識と技が融合
日本が誇る伝統工芸の一つ、香川漆芸の作家と海外ブランドとのコラボレーション作品が初めて誕生したのは2017年。ヒール部分に漆の装飾が施された「セルジオ ロッシ」の靴は、『家庭画報』に掲載されるや、大きな反響を呼びました。
第2弾となる今回は、洗練された靴やバッグで知られるイタリアの高級ブランド、「RODO」とともにパーティバッグを制作。RODOのオーナー、ジャンニ・ドーリ氏が漆の技術に敬意を表し、協力を快諾したことで実現しました。
1つのバッグの片面を香川漆芸の作家たちが、もう一方の面をRODOの職人たちが手がけるという斬新なプロジェクトで、先に制作したのは日本サイド。約1か月かけて、それぞれの個性が光る漆の装飾を施しました。そのプロセスにおいてひときわ難しかったのが、曲面部分を緻密に彫る作業だったといいます。
その後、今度はRODOの職人たちが漆の面に合うレザーやチェーンを厳選し、もう一方の面と金具などの細部を制作。8点のバッグを完成させました。
特筆すべきは、漆の色とこのうえなくマッチしたレザーの色。すでにレッドカーペットでもおなじみのブランドの真骨頂といえます。日本とイタリアの美意識と技術が海を越えて一つとなり、かつてない新感覚のパーティバッグが誕生しました。
作品ごとに作家が調合する色漆。朱色や黒以外の色も多く用いるのが香川漆芸の魅力。
図案を転写した板を蒟醬剣で彫り進める藪内江美さん。受賞歴多数の期待の星です。
バッグを装飾した香川漆芸作家のみなさん。右から石原雅員さん、藪内さん、中村芳弘さん、辻 孝史さん。中村さん以外は現在、香川県漆芸研究所で後進の指導もしています。
色鉛筆で「華」の図案を描く藪内さん。
イタリア・フィレンツェにあるRODOの工房。今回のプロジェクトで課題となったのが、デリケートな漆の美しさを保ちつつ実用に耐えうるようにすることと、漆部分を傷つけることなくバッグの縁を成型すること。
熟練の職人たちが何度も検討を重ねて最適な芯材を見つけることで、この課題を克服したといいます。
ミラノのRODO本店。カラフルなバッグ、靴がウィンドーを飾っています。
すべてのバッグは1点ものです。2019年3月1日より 和光 本館2階にて販売します。
撮影/Fumito Shibasak〈i Donna〉 本誌・西山 航(取材) スタイリング/郡山雅代 取材・文/清水千佳子