――佐野さんにとってのポップソングの魅力はどういうものでしょう?
「僕は12歳頃から、ラジオでアメリカやイギリスの音楽を聴いていました。それらは初めて聴く英語の歌なのに、なぜか口ずさみたくなるような親密さを持っていました。しかも演奏しているバンドやソングライターは、自分よりずっと大人。それでいて子どもの僕にもとても響いて、僕は曲に導かれるまま、まだ見ぬ女の子と恋に落ちたり、空を飛んだり、空想の世界でいくらでも遊ぶことができた。それがまさにポップスのマジック、魅力なんだと思います。僕もそんなポップソングをつくり続けたい。今回のアルバムの『純恋(すみれ)』や『天空バイク』は、そんな気持ちでつくった曲です」 ――その一方で、スポークン・ワーズ(自作詩の朗読)のライブも展開されていますね。
「ええ、今年4月にはニューヨークのブロンクスでライブをやりました。 そこで使う音楽は、アヴァンギャルドなジャズやヒップホップ。そうやってポップスとは対極にあるような音楽制作も同時にやることで、表現者としての自分のバランスを保つことができる。この年齢になってようやく、それが自然な形でできるようになってきて嬉しいですね。理解し難い現実に直面することも多い昨今ですが、怯むことなく、自分の言葉と音楽を武器にそれらを表現し、凌駕していきたいと思っています」 『Maniju』収録の「純恋(すみれ)」は、思春期を迎えた少年たちに向けて書かれた瑞々しいポップチューン。思わず口ずさみたくなる。