知っておきたい! 頼りになる専門外来 第10回 治療を続けているのによくならない、今の治療効果に満足していない――。このような悩みを抱える人は少なくありません。こんなときに頼りになるのが「専門外来」です。一般外来ではなかなか受けられない個別性の高い治療が期待できます。
前回の記事はこちら>> 前回に引き続き、診療科と職種を横断するチームを結成し、難治性慢性痛の診断と治療を行う専門施設を紹介します。
ここでは痛みを軽減する従来の治療法に加え、痛みを根本的になくすために生活習慣を改善し自己治癒力を引き出す運動療法と認知行動療法に重点を置き、生物心理社会モデルに基づいたアプローチから治療に取り組んでいます。
滋賀医科大学医学部附属病院ペインクリニック科 診療科長・病院教授
福井 聖先生慢性痛を難治化させる原因
慢性痛とは、炎症や関節の変形、神経の損傷などをきっかけに生じた痛みが3か月以上続いている状態のことで、痛みに敏感になっている脳や脊髄の中枢神経系システムが引き起こすとも考えられている。
慢性痛を難治化させる原因には、侵害受容性要因(炎症、関節の変形、軟骨 の変性による痛み)、神経障害性要因(中枢神経や末梢神経の損傷による痛み)、心理社会的要因(感情やストレスによる痛み)、機能的要因(姿勢の悪さなど生活習慣による痛み)などがある。
強い慢性痛がある人は痛みがない人に比べて全疾患で死亡率が上がることがわかっている。
慢性痛患者の状況と慢性痛対策
慢性痛患者は30~50代が最も多く、患者数は推計2300万人に上る。そのうち200万人は難治性と考えられており、多職種による学際的痛み診療が必要な患者は20万~23万人いると予測されている。
一方、国の慢性痛対策は2010年の提言をきっかけに始まり、2011年度から厚生労働省で「慢性の痛み対策研究事業」が取り組まれるようになり、滋賀医科大学医学部附属病院を含め全国22の大学病院に難治性慢性痛を対象とする診療拠点が設置された。
しかし、その数は十分ではなく難治性慢性痛患者が治療の行き場を失う難民化が起こっている。
そのため、国では2017年度より診療拠点病院を中心に地域の病院や診療所がネットワークを組んで患者をサポートする診療モデル事業を開始。
関西地区でもその取り組みが行われ、滋賀医科大学医学部附属病院は中心的な役割を担う。
こんな悩みは専門外来へ!
●さまざまな診療科を受診したが、痛みが改善しない
●原因不明の痛みに悩まされている
●手術をしないで慢性痛を治したい
●痛みを軽減する運動療法を知りたい
●特殊な神経ブロック療法を受けたい
次のページで詳細をご説明します。