痛くても患部を動かすことが 早い回復を促すうえで必要
痛み治療のもう1つの目的は、生活習慣を改善し、自己治癒力を引き出すことです。
「痛みがあると動きたくないという気持ちが強くなります。しかし、じっとしていると痛みは余計ひどくなり、不安も高まり、痛みの悪循環を引き起こします。慢性痛は痛くてもできるかぎり動かすことが必要なのです」と福井先生は慢性痛とのつきあい方を示します。
そこで、痛みの治療に導入されたのが運動療法と認知行動療法です。
運動療法では理学療法士がていねいに身体評価を行ったうえで痛みの原因を特定し、患部を動かせるように安全かつ効果的な運動の方法を指導します。
また、長年の生活習慣や痛みによって体のバランスが崩れ、筋肉や関節に負担がかかって、それが痛みの原因になることも多いため、日常生活での体の使い方や正しい動き・姿勢なども伝授します。
「このような運動療法を受けると、患者さんは自分自身で痛みに対処できるようになり、それが慢性痛に苦しめられて失った自信を取り戻すことにつながることもわかってきました」と福井先生は運動療法の効果について語ります。
また、認知行動療法では、痛みがあっても患者がやりたいと思うことが少しずつでも実現できるようにカウンセリングを通して働きかけていきます。
「臨床心理士と対話することで痛みに対する自己評価や考え方を見直し、さらには日常の行動、心の持ち方、周りの人とのつきあい方などを変えてゆけるようにサポートします」。