慢性痛の難治化を防ぐには症状が軽いうちに対応する
運動療法や認知行動療法を通して患者に行動変容を促すのは、痛みが悪化したり再発したりする要因には人間関係やストレスなどの心理的な問題、生活習慣、行動パターンが深く関与していることが多いからです。
「身体的な治療だけをしても難治性慢性痛は治りません」と福井先生は指摘します。
心身両面から痛みの治療が行われるようになり、痛みの原因となる疾患の治療も変わり始めています。
たとえば変形性関節症では手術をしても痛みが残る場合があり、その背景には心理社会的問題が潜んでいることがわかってきました。
そのため、必要な人には心理的サポートを含めた学際的な痛み治療を行ったうえで手術を検討すべきといった考えが広まっています。
休職中の慢性痛患者を掘り起こし産業医と連携し治療と復職支援を行う
一方、専門外来が足りず、難治性慢性痛患者が行き場を失う難民化も起こっています。国では2017年度より拠点病院を中心に地域の病院や診療所がネットワークを組んで患者をサポートするモデル事業を開始。
拠点病院である同センターでは産業医と連携し、痛みで休職している人を掘り起こして専門外来につなげ、症状が軽快したら産業医のもとで復職支援を行い社会復帰させる診療サイクルを構築し実践しています。
さらに、福井先生はITを活用した慢性疼痛検診の仕組みづくりや痛みのスクリーニング開発にも取り組んでいます。
「難治化を防ぐには症状が軽いうちに対応することが何よりも重要だからです」と福井先生は強調します。
慢性痛は悪化すると生命予後にも深刻な影響を及ぼす疾患です。痛みは我慢せず、ひどくならないうちに適切な診断と治療・ケアを受けたいものです。