山口 遼 女性のためのジュエリーお買い物学・・・ジュエリーを買うために最低限必要な基礎知識を、12回に分けてお届けします。
連載一覧をはこちら>> 前回までは、ジュエリーという商品が、いかにして我々普通の人のものとなったか、ということについてお話ししましたね。最後は「それでも実際にジュエリーを買うのは男性だった」と締めくくりました。
今回は、女性がジュエリーをどのようにして自分自身で選び、買い、使うようになったか、ということについてお話しします。「何とまあ、くどい話ですね」とお考えになるかもしれませんが、ジュエリーが本当に女性のものとなるまでには、なかなかに複雑な歴史があるのです。
【読みすすめる前におさらいする】
第1回 ジュエリーの起源と歴史(古代~近世) を読む
第2回 ジュエリーの歴史(近代~現代) を読む
第3回 女性のためのジュエリーが誕生するまで
Mary Evans Picture Library/アフロ
第一次世界大戦と女性の社会進出
20世紀も1910年代に入りますと、大事件が起きます。世界大戦です。「世界」といっても、戦争があったのはほとんどが欧州の中でしたが、この戦争はとにかく戦死者が凄い。軍人だけで1000万人を超えました。それまでの戦争の犠牲者は数万人という単位でしたから、これがいかに大変なことかお分かりでしょう。
なぜここまで犠牲者が増えたのか。理由は簡単、武器が発達したのです。機関銃、戦車、初期の航空機、毒ガスなど、大量殺人兵器がこの時代に一斉に生産され始めます。
戦死者の過半は男性ですから、欧州の社会からは一斉に男性が消えてしまいました。でも、消えたままで社会は回りません。その空隙を埋めたのが、女性です。ここに人類史上初めて、「女性が外に出て働き、自力で得たお金を自分で使う」という時代が訪れたのです。今や当たり前のことと思うかもしれませんが、こういう社会になってから、まだ百年ほどしか経っていないのですよ。