感情は通っていたか、感情の部分で嘘がないか。それが大切だった
本作に関して、「ホントの感情で作品の中に存在できた」という斎藤さん。それができたことを斎藤さんは、エリック・クーの魔法だと言います。
「オーディションは、日本とシンガポールをスカイプでつないで行われたのですが、そこでお芝居をしたわけでもなく、普通に会話をしたんです。恐らく彼は、何かを感じるか否かを見ていたのかなと。現場の作り方も同じで、エリックはほぼ1テイクで撮っていくんです。その中で何を確認するかというと、感情が通っていたか。本人的に感情の部分で嘘がなかったと感じているんだったら次のシーンにいくけど、という確認をいつもしてくれて。彼が優先するところは、見えない心の動き。外に見えるものも大切ですけど、それがどこから発生しているか、その人自身の衝動みたいなものを切り取るんです」
だからこそ、劇中に登場する料理も、「おいしそうに見えればいいということではなくて、実際においしいかをエリックは研究しつづけてくれた」といい、撮影期間中、そして今でもエリック監督は斎藤さんをホーカーズ(屋台村)に連れていってくれるそう。
「食事をしていても、“ちょっとだけお腹、空けとけ”って言われて、そのあとに地元の人しか行かないようなホーカーズに連れていってくれて屋台飯を食べさせてくれるんですけど、絶品なんです」
「ホーカーズでは、“うちはコレ”と決めたメニューをずっと探求しつづけているところが多くて。職人の本来の姿だなと思いました」