シンガポールと日本の歴史にも踏み込み、それを知る祖母と知らない真人が「食というフィルターで融合する構成は見事」と斎藤さん。監督を含めたスタッフがほぼ全員泣いたおばあちゃんとのシーン
完成した作品を観て、斎藤さんに訪れた感情がもう一つ。それを斎藤さんは、自身のブログ・斎藤工務店に「己の出演作を観てはじめて泣いたかも知れない」と綴っています。それは、「映像を観ると、フラッシュバックするんです。それで同じ感情になったり、味が戻ってきたり、撮影のとき、そのときに生きた時間みたいなものに引き戻されて」流れた涙だといいます。中でも「特に」と斎藤さんがあげた場面が、真人の祖母であるマダム・リー(ビートリス・チャン)とのシーン。
「“本当”がいかに宿るか、徹底的に挑戦させてもらった作品だったんですけど、おばあちゃんとのシーンは不思議な空気で。撮影しながら、“ここでこうしよう”という感情の献立は作りませんでした。でも、湧き上がる感情みたいなものが実際にあって、なんだかわからないけど感極まってしまって。エリックも含めてスタッフもほぼ全員泣いていたそうです。何かがちゃんと宿った、“本当”がちゃんと捉えられた瞬間なのかなという実感がありました。そこにいた全員が、そのシーンを成立させる何かが生まれたことを言葉じゃなく共有できた。これがもしかしたら映画というものなのかなと、それぐらい思ったシーンでした」
斎藤 工/Takumi Saitoh
俳優
1981年8月22日生まれ、東京都出身。モデル活動を経て、2001年に俳優デビュー。近年の主な映画出演作に、『昼顔』、『去年の冬、きみと別れ』、『のみとり侍』、『麻雀放浪記2020』(4月5日公開予定)など。齊藤工名義でフィルムメーカーとしても活躍。初長編監督作『blank13』では、上海国際映画祭アジア新人賞部門最優秀監督賞を日本人として初めて受賞した。
『家族のレシピ』
監督:エリック・クー
出演:斎藤 工 マーク・リー ジネット・アウ 伊原剛志 別所哲也 ビートリス・チャン 松田聖子
配給:エレファントハウス/ニッポン放送
3月9日(土)シネマート新宿ほか全国ロードショー
公式サイト/
https://www.ramenteh.com
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