ミュージカルから朗読劇まで、幅広い舞台作品で確かな存在感を残す実力派。かつて一世を風靡した老芸人と若く才能あるバレリーナの儚く美しい愛を描いた、チャールズ・チャップリン晩年の傑作映画『ライムライト』。その感動作を世界で初めて舞台化し、大好評を得た音楽劇が、チャップリン生誕130年の今年、再演されます。ヒロインのバレリーナに思いを寄せる作曲家ネヴィル役で、新たに出演する矢崎 広さんに、意気込みを伺いました。
――石丸幹二さんの主演で、世界で初めて舞台化された本作品。矢崎さんは、2015年の初演をご覧になっていますか?「いえ、残念ながら観ていません。でも、チャップリンの映画は観ました。さすが、不朽の名作と言われているだけあって、すっかり引き込まれました。それぞれがみんなの幸せを願っていて、悪い人が1人も出てこない映画なのに、誰かがうまくいくと、誰かがうまくいかなくなってしまう。それがなんとも切なくて、人生そのものという感じがして。石丸さんが、自分の芸が思うようにいかなくなってきたチャップリン自身の気持ちも投影されている作品ではないかとおっしゃっていたんですが、それは僕もすごく感じました」
――昔は人気があったものの、今は落ちぶれて酒浸りの老芸人カルヴェロを、初演に続いて今回も演じる石丸さんは、チャップリンのファンで、中でも映画『ライムライト』がいちばんお好きだとか。「世界初の舞台化に挑んで演じた際のパワーや心情は、相当なものだったと思います。あのチャップリンの名作を舞台にするには覚悟が必要だったでしょうし、これを受け入れてもらえるだろうか?という不安もあったはず。そんな中で初演の舞台に立った方々に、自分はまず気持ちの面で追いついていかなければと、強く思いました」