“つくられていない自分”を表現できる場所
イメージとしては、劇場空間そのものが香取さんの体内であるかのようなしつらいになるらしい。
「僕に食べられるような感覚で、劇場の入り口=口から入って、頭の中や内臓を巡ってもらって……。どうも僕は、自分の中を見てもらうのが好きみたいです。
もう何年も前に、自分のレントゲン写真でコラージュをつくったり、内視鏡写真のコピーを使ったコラージュがあったり。アイドルの写真を見ることはあっても、そんな写真まで見ることはまずないだろうから、面白いかなと思って(笑)。
今回は、散髪して髪の色を変えるたびにとっておいた自分の髪を使って、何かつくろうかとか、そういうことは常に考えてます。もちろん僕の中にも線引きはあるので、さすがに爪はストックしてませんよ(笑)」
そのユニークで自在な発想力もまた、アーティストとしての資質に違いない。子どもの頃から絵が大好き。美術展にもよく足を運び、いつしか自分でも描くようになった香取さんは、国民的アイドルグループ時代も、時間があれば絵を描いていた。
ソロ活動開始以降は、「香港アートマンス」(2018年3月)のプロジェクトに参加して、香港島に ある世界一長いエスカレーターの壁画を制作したり、スタイリストの祐真朋樹氏とともに、自身のアート作品がデザインされた服などを扱う進化系セレクトショップ『JANTJE_ONTEMBAAR』(ヤンチェ・オンテンバール)をオープンしたり。
しかしながら、香取さんにとってアートは、今も昔も変わらず“つくられていない自分”を表現できる場所だ。
今回の個展に展示予定の作品より。左《SYMBOL-TRIANGLE》2015年・コラージュ、右《OTOMODACHI》2015年・アクリル画。