具合の悪さに対応するためのケーススタディー
ケース(1)
頭が痛くて体がだるいのに医師は「心の病」だという。意味がわからない……
半年ほど前から日常的な頭痛が続いているAさん(48歳)。市販の頭痛薬も効かず、ひどいときは1日のほとんどを寝て過ごし、家事も手につきません。
たまに調子のよい日に買い物に出かけても、体がだるくて途中で家に帰ってきてしまう始末。
近くのクリニックを受診して血液検査と脳のCT検査を受けましたが、結果はいずれも異常なし。つらさを訴えるAさんに、主治医は困りはてた様子で「心の病かもしれませんね」とひと言。
明らかに体の症状なのに心の病だといわれてどう解釈したらいいのか、Aさんは戸惑っています。
【患者の心得】
医師の理屈で病気でない場合によく使われる言葉、と理解するその医師は「検査で異常がないから体の病気ではない。それでも患者さんが具合の悪さを訴えるのなら心の病気だろう」という独特の思考回路に陥っています。
内科医や整形外科医が漠然と「心の病」「メンタルの問題」と表現するときは、患者さん自身に思い当たる状況がないかぎり「原因がわかりません」と同じ意味で、文字どおりに受け止めなくてよい場合がほとんどです。
ただし、もし医師が「うつ病かもしれません」など具体的な病名を出してきたときは、何らかの根拠に基づいた発言である可能性もあるので、メンタルの専門医にみてもらうのも1つの対応法だといえます。
ケース(2)
はっきり病名もいわないし、薬を飲んでも改善しない。これ以上通院しても無駄か?
Bさん(58歳)は、1年ほど前から肩こりと背中痛と全身の重い倦怠感に悩まされ続けています。そのせいで夜も熟睡できず、外出もつらくて家に閉じこもりがちの生活を送っています。
今までに婦人科、内科、整形外科といくつもの病院を受診しさまざまな検査を受けましたが、どこへ行っても診断がつきません。鎮痛剤や漢方薬など何種類もの薬も試しましたが、改善の兆しが見られません。
これ以上の通院は時間の無駄なのではないか、一生我慢するしかないのかとあきらめの境地に至っています。【患者の心得】
自分なりに工夫し、その結果を医師と共有する努力が必要医師も有効な治療法を見つけられないジレンマを抱えています。通院をやめても病院を替えても何も解決しません。Bさん自身が、症状軽減のために日常生活の中で思いつく工夫をしてみることが必要です。
たとえば朝晩のストレッチ、ウォーキングや水泳などの運動、座るときの姿勢の見直し、枕の高さや布団の硬さなど寝具の調整といった工夫を試み、その結果(改善した、変化なし、悪化したなど)を医師と共有して、どのような行動が症状の軽減につながるかを二人で見つけていくのです。患者さんの工夫と努力が医師のやる気を引き起こすことにもなります。
ケース(3)
つらさが医師に伝わらない
慢性頭痛を抱えているCさん(53歳)。日や時間帯によって異なる痛みの程度を医師にうまく伝えられず、悩んでいます。
【患者の心得】
程度や変化を数字で表してみる数値や画像で表せない痛みやつらさなどの感覚を伝えるには、医師との間で共通基盤を作ることが有効です。
たとえば最大の痛みを10、中程度の痛みを5と設定して、「1週間前は8でしたが今は6です」「午前中はいつも2くらいですが、夕方は6くらいになります」など程度と変化を数字で表して記録しておくのもよい方法です。