千葉哲也さんは、成河さんが見事に38役を演じ分けた昨年の一人芝居『フリー・コミティッド』でも演出を担当。絶大な信頼を寄せている。――その作品で、読売演劇大賞優秀男優賞を受賞(『BLUE/ORANGE』および『春琴』の演技により受賞)したのは、さすがです。「いえいえ、それは本当にしゅうさんと千葉さんのお陰ですし、千葉さんの演出力があったから。お2人とも本当に可愛がってくださって、そういえば稽古の時から“これでお前に(賞を)取らせるぞ”なんて言ってたんですよ。僕は“何を言ってるんだ!?”と思っていたんですけど。役にも恵まれました。クリストファーはとても面白い役でしたし、当時の僕の感性に合っていた部分もあって」
――ブルース役で挑む今回の課題は何だと思いますか?「自分の包容力の限界を広げて、章平くんをどこまで受け止められるか、ということ。千葉さんが僕に示してくれたものを、今度は章平くんにきちんと渡したいというのが、課題というか、やりたいことですね」
――成河さんが演劇を始めたのは大学時代だそうですね。「入学した法政大学の演劇サークルを中心に、いろいろ見て回ったんですけど、あまりしっくりこなくて。たまたま見つけた、当時、東大駒場キャンパスで活動していたシアターマーキュリーという演劇サークルに入りました。そこで出会った広田淳一さんと立ち上げた劇団が、ひょっとこ乱舞(現在の劇団名はアマヤドリ)でした」
――昔からお芝居に興味があったのですか?「いえ、高校時代はバンドをやってました。ハードコア(パンク)のコピーバンドで、一応、僕は歌もベースもギターもドラムもやってたんですけど、下手くそだから、3コードぐらいで、音歪ませて音量ガンガン上げて、英語メチャメチャだけど、叫んでりゃなんとかなる!みたいなノリでしたね(笑)」