ケロイドの診断と治療法を確立し、“不治の病”から“治せる病気”に
日本医科大学付属病院 形成外科・再建外科・美容外科は、「不治の病」といわれてきたケロイドの診療に率先して取り組んできました。
他院に先駆けて「ケロイド外来」を開設し、国内外から年間2000人弱の新規患者を受け入れています。「その多くは“ケロイドは治らない。一生つきあっていく病気だ”と医師から宣告され絶望した人たちです」と同大学形成外科学教室主任教授で同科部長の小川 令先生はいいます。
皮膚が傷つくと、傷を治すために炎症反応が起こります。その反応が過剰に続くと、傷のある部分にコラーゲン線維が蓄積されて赤く盛り上がってきます。
もともとの傷の範囲を超えて正常な皮膚にも炎症が広がっていくものを「ケロイド」、傷の周りで炎症が止まっているものを「肥厚性瘢痕」と呼びます。
「この2つの病態に組織的な違いは少なく、炎症反応が強いものがケロイド、やや弱いものが肥厚性瘢痕だと考えればよいでしょう。私たちはケロイドを血管機能が弱いために起こる病気だと捉えていますが、炎症反応が過剰に続いてしまう原因はわかっていません」と小川先生は説明します。
ケロイド体質の人は小さな傷でもケロイドを発症
また、ケロイドを起こしやすい体質があり、子どもの頃に受けたBCG予防接種のあとが赤く盛り上がっている人はこの体質であることが多いそうです。
こうした遺伝的要因が絡んでいるため、手術や帝王切開、けがなどの大きい傷だけでなく、ニキビや水ぼうそう、やけど、虫刺され、ピアスの穴といった小さな傷からもケロイドや肥厚性瘢痕を起こします。
さらに、女性ホルモンと高血圧の影響も受けやすく、これらの要因があるとケロイドを起こしやすいうえに悪化しやすいことがわかっています。
「50代以降、女性ホルモンのリスクは減るものの、高血圧のリスクが高まるので、ケロイド体質の人は油断禁物です。女性ホルモン補充療法を行っている人もハイリスクの状態といえます」。