気鋭の味を訪ねる:
ひと皿ごとに込められた九州の「今」をイタリアンで再発見
――リストランテKubotsu(天神)
「香草のソース・サルサベルデ」の川を泳いでいるのは、宮崎産メヒカリのフリット。博多湾に浮かぶ志賀島を眼下に空港に降り立つと、九州最大の繁華街・天神へはすぐ。アジアの大都市と連なる一大拠点としての役割や機能を高めるための再開発で沸き、ご当地グルメでも人気の街です。
天神の中心部、警固公園に面した複合商業施設「レソラ天神」ビル。こちらの4階にある「リストランテKubotsu」は、料理長である窪津朋生さんが訪ね求めた地元の食材のみならず、工芸品を用いた器づかいやインテリアに至るまで、徹底的に九州にこだわり抜いたイタリア料理店です。
「ななつ星 in 九州」のインテリアにも採用されている大川組子をあしらったエントランス。博多織に店名を織り込んだメニュー帳。「大川組子のプレートにのっているのは、鹿児島県阿久根産のちりめんキャベツに包まれた熊本県の梅山豚(メイシャントン)に、長崎県五島でとれたアオリイカのムースのカナッペです。梅山豚は放牧で育ったんですよ」と窪津料理長。
「リストランテKubotsu」の季節のアミューズ。中里太亀さん作の唐津焼の器に盛られたのは産地の違うプチトマトと、鹿児島産グリーンピースのもなか。大川組子のプレートには2種のフィンガーフードを盛り込んで。陣内夫妻を出迎えた窪津料理長は、転勤族だった父の仕事の関係で多感な高校時代を福岡で過ごした。「ひらまつ」に入社後、東京「リストランテ ASO」の副料理長となる。2011年「リストランテ ASO 天神」の立ち上げメンバーとして、福岡へ。そして昨年、「リストランテKubotsu」をオープンさせた。恵理子さんは「お料理を通して九州を旅している気分。生産者のかたを訪ねて歩いたエピソードが聞けるのも楽しいわ」とすっかり“Kubotsu”に魅せられたよう。
プレートの大川組子は孝則さんのふるさとの工芸です。「家具の街で生まれ育ちましたが、天神のリストランテで出合えるなんて」と懐かしげな表情の孝則さん。
ひと皿ごとに込められた九州の魅力と料理長の思い。そして新しい味に出合えました。
カップに入ったスパゲティを“ゆりかごあさり”と筍のソースの器に加え、ボンゴレロッソを完成させるパスタメニュー。「あつひろ農園」の大きないちごをカルパッチョ風に仕立てたデザート。 Information
リストランテ Kubotsu
福岡市中央区天神2-5-55 4階
- 要予約。ランチ4000円~、ディナー8000円~。
陣内孝則(じんない・たかのり)さん
1958年、福岡県大川市生まれ。80年「ザ・ロッカーズ」のボーカルとしてデビュー。俳優に転向後は数々の映画、ドラマ、舞台で活躍するほか、映画監督やバラエティ番組など多才ぶりを発揮している。
4月17日にはザ・ロッカーズとして38年ぶりのアルバム『Rock’n Roll』をリリース。5月には全国5か所でライブを予定している。ファッションモデルの奥さま、恵理子さんとは87年に結婚。2児をもうける。
表示価格はすべて税抜きです。
撮影/本誌・坂本正行 スタイリング/おおさわ千春 ヘア&メイク/Eita〈Iris〉 取材・文/平井しのぶ 取材協力/九州観光推進機構
「家庭画報」2019年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
※ご紹介した料理の献立は、仕入れの都合で食材や内容が変更になる場合があります。また、別途サービス料等がかかる場合があります。