【連載】フィギュアスケート愛(eye) フィギュアスケート愛(eye)とは……本誌『家庭画報』の「フィギュアスケート」特集を担当する、フリー編集者・ライターの小松庸子さんが独自の視点で取材の舞台裏や選手のトピックスなどを綴ります。
バックナンバーを見る>>>FS「Origin」の演技終了後、まさに会場が揺れました。羽生選手の渾身の演技に、目頭を押さえる観客の方も多数見受けられました。写真/松尾/アフロスポーツ約4か月ぶりの実戦に
会場からは割れんばかりの歓声が!
2019年3月20日〜24日に、さいたまスーパーアリーナで行われた“世界フィギュアスケート選手権2019”(以下、世界選手権)。2014年以来、5年ぶりの日本開催だったこの大会で、私たちは羽生結弦選手が新たな扉を開いた瞬間に立ち会えたのかもしれません。
2017年の11月9日、NHK杯前日の公式練習で4回転ルッツに挑んだ羽生選手は、転倒した際に右足首を負傷。18年11月に行われたグランプリシリーズ(GPS)ロシア大会の公式練習中に怪我をしてしまったのも、やはり右足でした。
綿密に立てられた治療スケジュールのもと懸命にリハビリを行い、何とか調整を間に合わせて、約4か月ぶりに氷上の姿を見せてくれた世界選手権の会場は連日超満員。世界のトップスケーターたちが久しぶりに一堂に揃う期待感で、会場は熱気に包まれていました。
なかでも、ひときわ大きな、割れんばかりの歓声で迎えられたのが羽生結弦選手。
大会直前、3月19日の日本男子記者会見で語った「いろいろな方たちのサポートを受けながら、試合に出られる状態に戻すことを重点的にやってきた。怪我は完治していないものの、コンディションは100%。サポートしてくださった方々への感謝の気持ちで滑りたい」との言葉からも、強い意志で、重度の怪我と向き合ってきたことがわかりました。
この記者会見で羽生選手が語っていたなかで一番印象的だったのは、「相手に勝つだけではなくて、自分に勝った上で、自分のなかでいま、すごく煮えたぎっている“勝ちたい”という欲求に対してすごく素直になって、勝ちを取りたいなと思っています」という言葉でした。