ここ10年でないくらい真剣に臨んだ現場
寺島さんが本作への出演を願った理由は、役柄だけではありません。「中島監督とご一緒できるチャンスなんてなかなかない」と寺島さんは言います。現場で見た中島監督は、「80代とは思えないぐらい若いですし、元気ですし、タフですし……。夜中の12時を過ぎたら、みんなフラフラなんですよ(笑)。でも、一番元気でしたね」。そこには、「映画と演出に対してのすごい集中力」と「映画人って現場に行くと入るんですよね」というスイッチがあると感じたのだとか。だから、「杖を持ちながらあれだけ現場で動いて、いろいろな演出をできるんじゃないかなと思います」。
そうは言うものの、撮影の際に中島監督から直接何かを告げられたり、求められたりはなく、「これだけ監督とディスカッションしない現場は初めてでしたね」と寺島さん。
「(役者を)30年以上やっていると台本を読んで、何をやるべきかは把握できているので、それをまず真剣にやる。ここ10年でないくらい真剣でしたね。もうホントに無の境地で。あとは、現場でスタッフと殺陣師の方と話し合いを。(中島監督の話は)間接的に聞いていました。間に(脚本の)谷 慶子さんとか監督補の熊切和嘉さんも入っていたので。自分で提案したことも口伝えしていただいて、OKならそれでいきますという感じでした」
溝口役は松方弘樹さんにやってもらいたかったと中島監督から聞いた寺島さんは、「尊敬する松方さんへの追悼の思いで臨みました」。