実は、加古さんがフランスでソロコンサートを初体験して、今年でちょうど40年。当時、フリージャズのピアノトリオで、欧州各地で即興演奏をしていた加古さんに突然、知人のプロデューサーから電話があり、大雪でその日イギリスから来られなくなった音楽家の代わりに、北フランスの音楽祭のピアノソロを集めたコンサートに、急遽出演したという。
「何をどう弾いたかよく覚えていないんですが、クラシック、ジャズ、現代音楽といったジャンルに関係なく、僕がそれまでの人生で触れ、学んできた音楽のすべてが出てきた約50分間でした。ピアノと僕だけが宇宙空間に浮いているような、とても不思議で特別な時間を体験したということだけが自分の中に残り、帰国後、ピアノソロの活動を続ける中で、これが僕のライフワークだと思い定めました」
そんな加古さんが仕事をする際に大切にしているのは、まず自分が感動できる音楽であること、そして、今持っている力のすべてを尽くすこと。
「僕の場合は、曲を作って演奏して、初めて一人前の音楽家。その純度が結晶のように最も高いのが、ピアノソロコンサートだと思います」と話す加古さんの“今”を、ぜひ会場で堪能したい。
加古 隆(かこ たかし)
作曲家、ピアニスト。1947年生まれ。パリ国立高等音学院にてオリヴィエ・メシアンに作曲を師事。NHK『映像の世紀』のテーマ曲「パリは燃えているか」で知られる。映画音楽での受賞も多数。
加古 隆 ソロ・コンサート 2019『ピアノと私』
(c) Nobuo MIKAWAサントリーホール
5月11日 14時~ 全席指定6500円 キョードー東京
電話:0570(550)799
5月6日に名古屋市芸術創造センター、12日に高崎市文化会館、6月8日に札幌コンサートホールKitara小ホール、22日にいずみホール(大阪)公演あり。
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/岡﨑 香 撮影/本誌・西山 航
「家庭画報」2019年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。