ちょっと嫌だなと感じる、きつめの運動を続けましょう
私は、冷えを訴えるかたがたに「熱を生む筋肉をつくるには、自分にとって少しだけきついこと、嫌なことをしましょう」と話しています。
たとえばエレベーターやエスカレーターは使わずに階段を利用し、電車やバスでは座らないようにと。揺れる車内で転ばないように立つだけでも筋肉がつき、バランス感覚が養われ、老化防止効果まで得られますから。
昔取った杵柄とばかりに、ジョギングなどの心臓に負担がかかるトレーニングに励むより、暮らしの中で、ちょっと嫌だなと感じるくらいのややきつめの運動のほうが、気軽にいつでも行える“冷え取り習慣”が身につくのではないでしょうか。
家ではなるべくつま先立ちで過ごしてください。洗濯物を干すときも1枚ごとにしゃがめば、これもりっぱなスクワットです。掃除もできればしっかり腰を落として床を雑巾がけするなど、筋肉が多い下半身をよく使うように意識し、毎日こまめに体を動かしましょう。
そのほか、手軽な冷え対策としては指先のマッサージも効果的です。両手の指を交互に組んで軽く握る、これを繰り返すという方法ですが、なぜよいのかといえば、体の末端の指先には静脈と動脈が切り替わるポイントがあり、ここを刺激することで血液の循環が改善し、冷え解消に役立つからです。
人の体は本来寒いと感じれば、呼吸数や心拍数が上がるように体温を上げようとします。でも現代人に冷えや低体温が蔓延しているのは、エアコンなどの普及で、季節の気温の変化に適応する力が弱くなってきたからでしょう。
冷えに悩むかたの多くは、そういう危険な状態に無自覚で、冷たいアイスを好んで食べたりしています。口に入れるものは温かいものを、それが冷え取りの鉄則なのですが。
なお、日本人の2人に1人ががんという時代、冷えはがんの増殖を加速させることをご存じでしょうか。
冷えた体の血流は滞りがちで、酸素が運搬されにくくなります。実は、がんは酸素のない嫌気性の環境で増殖しますから、冷えた環境はとても居心地がいいのです。
がん予防のためにも冷え取りの習慣を続けましょう。血液中をスムーズに循環する酸素ががん細胞に素早く届いて、その増殖を抑えてくれます。
取材・文/宇津木理恵子 撮影/八田政玄
「家庭画報」2019年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。