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中江有里さん、披露宴に秘められたそれぞれの人間模様を描く『残り物には、過去がある』

2019.05.08

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今月の本

披露宴に秘められたそれぞれの人間模様


中江有里さん

中江 有里(なかえ ゆり)
1973年大阪府生まれ。89年、芸能界にデビューし、多くのテレビドラマ、映画に出演。2002年に「納豆ウドン」を発表。著書に『結婚写真』『わたしの本棚』などがある。



ある披露宴を舞台に、新郎新婦やその周囲の人々を、秘められた過去とともに描く──中江有里さんの『残りものには、過去がある』は、連作ならではの人物相関や物語の展開で読者を引き込む短編集だ。

「結婚式は基本、自分と関係のある人をお祝いするので呼ばれると嬉しいし、私は披露宴が好きみたいなんです。ただそのいっぽうで、結婚に苦しんでいる人が少なくないのはどうしてなのかとも考えていて......。

それは多分、本来、個である人間同士が一体になろうとしすぎるからで、一つになろうとすればするほど、互いの違いに気づいて苦しくなってしまうのではないか、と。ならば、互いの違いを認め合える関係がいちばんよいわけで、それに最も近いのが、私にとっては友情なんです」と、結婚や人間関係について興味深い視点から語る中江さん。

新婦・早紀のレンタル友だちとして、披露宴で祝辞を述べる栄子。ある事故を機に、早紀と疎遠になっていた従姉の貴子。かつて新郎・友之と恋愛関係にあった美月……。

一作ごとに語り手(視点)を変えつつ、人物を浮き彫りにするその光の当て方に、中江さんの観察力と想像力がうかがえる。

「たとえば一作目『祝辞』の栄子は、仕事で披露宴に参加しているので、新郎新婦のことを情報でしか知らないという点では、読者と同じ立場です。なぜふたりが結婚するのか。理由を知らない栄子が、彼らの心中を想像しながら、そこに自分の結婚生活を重ねてゆくように、人の内面を想像することは、想像する人自身を照らし出すことにもなるんです」
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