『骨まで愛して−粗屋(あらや)五郎の築地物語−』
小泉武夫 著/新潮社 1300円一本数十万、数百万円の値がつく本まぐろを日に何本も解体する「捌き屋」として目利きたちに信頼され、築地魚市場でその名を知らぬ者はいない鳥海五郎。
築地ひと筋に生きて40年。そんな五郎が55歳の誕生日を機に選んだ第二の人生が、日本初の魚のあら料理専門店「粗屋」を開店し営むことだった......。
発酵仮面、食の冒険家などいくつもの異名を持つ小泉武夫さんの『骨まで愛して』は、ゼラチン質やコラーゲンなど栄養価の高いあらの旨さを知り尽くす五郎の職人技から生まれる逸品料理や、彼を囲む築地の人たちの人情が読むご馳走のような小説。
今まで廃棄物だったあらの価値を見直すという発想に、食に対する小泉先生の矜持が覗く。