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平松洋子さんがナビゲート!映画『幸福なラザロ』の見所は?

2019.05.13

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現代の聖人を描く、どっしりと大きな構えの作品だ。

フェリーニ、ヴィスコンティを始め、人間を描くイタリア映画の嫡流。善とは何か、善く生きることの意味を問いかけながら、しかし、終始リアルな身体から離れることはない。

30代の女性監督アリーチェ・ロルヴァケルは、随所に配した映像表現によって寓話性を引き上げ、しかも、ミステリアスな冒険譚の空気をまとわせて破格の実力をしめす。


この俳優の身体をもってしか本作は描き得なかったと確信させるラザロ役、A・タルディオーロは、高校在学中、監督によって発掘された新人である。

フィルム撮影による農作業や自然風景の映像美にも心を奪われる。描かれているのは現代なのに、全編には時代を超越した時間や空間がたゆとう。

観客の手に届けられたのは、優美な光を帯びた、映像による福音である。

 

『幸福なラザロ』


幸福なラザロ

(c) 2018 tempesta srl ・Amka Films Productions ・Ad Vitam Production·KNM·Pola Pandora RSI·Radiotelevisione svizzera·Arte France Cinema·ZDF / ARTE

小作制度廃止を隠蔽する侯爵夫人が農民を搾取し続ける、外界から隔てられた小さな村。あるときこの村に来た侯爵夫人の息子は、若く純朴なラザロを利用して、狂言誘拐を企てる。だが、これを機に夫人による詐欺事件が発覚。村人たちが外の世界へ出てゆくなか、ラザロは......。

2018年 イタリア映画 127分
監督・脚本/アリーチェ・ロルヴァケル 出演/アドリアーノ・タルディオーロ、アニェーゼ・グラツィアーニ、アルバ・ロルヴァケル
2019年4月19日より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

平松 洋子(ひらまつ ようこ)

エッセイスト。講談社エッセイ賞を受賞した『野蛮な読書』や『洋子さんの本棚』など、近年は本についての作品を数多く発表。近著に『そばですよ(立ちそばの世界)』『日本のすごい味』など。

 
取材・構成・文/塚田恭子

「家庭画報」2019年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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