人生百年時代を迎えて“生きる”を問う「幸福寿命」 第5回 現在、100歳を超えている人々が約7万人弱。果たして、長寿は幸福なのか?長寿社会における幸福とは? 幸福な寿命とは?前回の記事は
こちら 百寿者調査に長年取り組んできた慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センターによると百寿者のほうが80〜90歳代の人よりも幸福感が高いそうです。
その理由について同センター特別招聘教授の広瀬信義先生は「百寿者は幸せになろうとするスキルを持っているからだ」といいます。
そこで、広瀬先生たちがこれまでインタビューしてきた800人余りの百寿者の印象的な言葉から“幸福寿命”を実現するためのヒントを探ります。
広瀬信義(ひろせ・のぶよし)先生
慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター特別招聘教授
慶應義塾大学医学部卒業。同大学医学部老年科講師、同大学病院老年内科診療部長などを経て2014年より現職。著書に『人生は80歳から年をとるほど幸福になれる「老年的超越」の世界』。百寿者になる百年の物語
思い出は美しく(女性105歳)
~前向きに捉える~
34歳のときに主人に先立たれましてね、5人の子どもを残されて生活が本当に苦しくて一家心中をしようと。でもね、「子どものために死ねない」と思い直して、もう死にものぐるいで働きましたよ。つらいことも多かったけれど、今はとても幸せ。生きていてよかった。
恋する110歳(女性110歳)
~ときめきを忘れない~
老人ホームに入ったら寂しいと思うでしょ。でも、ちっともそうじゃないの。私はこのホームで暮らしていて、とても幸せ。お友達と一緒に食事ができるし、若いヘルパーさんも親身にお世話してくれる。何よりも施設長さんが素敵でね、私のところに施設長さんが来てくれると「あら、うれしい」なんて声が裏返っちゃうのよ。
人生を俯瞰する(女性102歳)
~視界を広げる~
親もきょうだいも、たくさん血縁はいますけど、誰でもみんな人間は孤独だと思うの。そう感じることはありませんか。私はそう思います。みんなもそうなんだから、自分だけ孤独だなんて思わないほうがいいですよ。
“もてなしの心”は一生(男性102歳)
~他人に尽くす~
年を取るまで健康でいることは本当に大変ですよ。でもね、長い人生のうち、できることなら周囲の人を喜ばせたい。そのためにも自分が健康でいないとね。自分自身も人生を楽しんで、ほかの人のことも助けられる。これが人間としての最高の世渡りだと思います。
前向きが一番(女性110歳)
~楽天家になる~
人生で楽しいことがあったかどうか覚えていないけれど、つらいことも覚えていないから、きっと楽しいことばっかりだったのでしょう。
頑張らなくてもいい安堵感(女性110歳)
~あきらめる~
若いときはうまくいかないことがあるとその都度、落ち込んだりイライラしたりしていたの。だけど、80歳を過ぎた頃から「この程度の実力だから仕方がない」と思えるようになって。そしたら、気持ちがとっても楽になりました。この年になると、やりたくてもできなかったり、やらせてもらえなかったりすることも多いけど、それも仕方がないかって。
126歳まで生きたい(女性110歳)
~希望を捨てない~
いつまで生きたいかって? 今、110歳だけど目標は126歳。いくつになっても人は希望を持たなきゃいけないのよ。
※参照/『百歳百話』(百寿者研究会 著 日東書院刊)
〔特集〕人生百年時代を迎えて“生きる”を問う「幸福寿命」
撮影/本誌・西山 航(静物) 切り絵制作/菅野一剛〈nekonekodesign PAPER ARTS〉 取材・文/渡辺千鶴
「家庭画報」2019年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。