人生百年時代を迎えて“生きる”を問う「幸福寿命」 第7回 現在、100歳を超えている人々が約7万人弱。果たして、長寿は幸福なのか?長寿社会における幸福とは? 幸福な寿命とは?前回の記事は
こちら 伊藤 裕先生に聞く
50歳から始める「幸福寿命を全うする」生活習慣
伊藤 裕先生(いとう・ひろし)
慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科教授 第19回日本抗加齢医学会総会会長
京都大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科博士課程修了。専門は内分泌学、高血圧、糖尿病、抗加齢医学。京都大学大学院医学研究科助教授等を経て2006年より現職。高峰譲吉賞、井村臨床研究賞など受賞多数。「メタボリックドミノ」概念の提唱者として知られる。長生きの状態が二極化する時代。死ぬまでずっと幸せでいるためには、年齢を重ねても心身の健康を保てるよう50代の今からよい生活習慣に改め、しっかり備えることがとても大切です。
ミトコンドリア、ホルモン、腸内細菌の3つがカギに7万人弱の百寿者がいる一方で、要介護の高齢者も600万人以上いる現実。人生の行く末さえも二極化することを真摯に促え、死ぬまでずっと幸せでいるには、年齢を重ねても心身の健康を保てるよう50代の今から備えておくことが大切です。
この幸福寿命のキーワードとして伊藤 裕先生は「ミトコンドリア」、「ホルモン」、「腸内細菌」の3つを挙げます。
「私たちは元気がなくなると幸せになりたいと思わなくなります。そのため、元気(エネルギー)をつくり出すミトコンドリアの機能を保つことがとても大切になってきます」。
また、伊藤先生は「一人では絶対に幸福感を得ることはできません。自分にとって近しいと思える人がいることが“幸せ”には必要です。なぜなら幸福とは、人と人の“あいだ”にだけ存在するからです」といいます。
人との関係性を深めるうえで活躍するのは各種ホルモンで、なかでも“絆ホルモン”と呼ばれるオキシトシンの働きをうまく活用するのがよいそうです。
新・生活習慣で成熟期に向け健康の土台づくりをさらに、腸内細菌がつくり出す代謝産物が体内に吸収されることにより、ホルモンのような働きが全身に発揮されます。
「近年はがん、アレルギー、肥満、メタボ、パーキンソン病などの病気の発症にも関与することが明らかとなり、健康の土台づくりには健全な腸内細菌の存在が欠かせません」と伊藤先生。
そして、この3つの働きを高める生活習慣に取り組んでいくことが幸福寿命を全うするうえでは必要だと説きます。そのノウハウについては、次ページで具体的にご紹介します。