作品や役に臨む際にいちばん大切にしていることは“心”
人柄がそのまま滲み出ているような飾り気のない笑顔が、本当に魅力的な妻夫木さん。
俳優デビュー20周年を迎えた昨年は、自ら企画にも携わったというテレビドラマ『イノセント・デイズ』(WOWOW)で、3年半ぶりに連続ドラマの主演を務めた。
また秋からは、野田秀樹さん作・演出の舞台『贋作 桜の森の満開の下』に主演した。妻夫木さんにとって5作品目となる野田さんの舞台。「ジャポニスム2018」の公式企画の一つとして開催されたパリ公演も含め、約3か月にわたり舞台に立ち続けた。
「野田さんの舞台は動きが激しいので、最後のほうは満身創痍。楽しかったけど、しんどかったなあ(苦笑)。すべての力を出し尽くした感があります」
そんな彼に、作品や役に臨む際にいちばん大切にしていることを尋ねると、「やっぱり心じゃないですか?」という答えが返ってきた。
「“とりあえずやる”みたいな流れ作業では、絶対にいい芝居は生まれないと僕は思っています。当たり前のことではあるけれど、心がないとやれない。どんな役や作品も、まず自分が愛していないとダメな気がします。それは映画『ウォーターボーイズ』(2001年)に出演した頃から、ずっと変わらず思っていることです」
聞けば、心を寄せて役に打ち込むあまり、映画の撮影中は素の自分にも影響が出たりするという。
「たとえば、映画で嫌な奴の役をやっているときは、無意識に普段の自分まで嫌な感じになってしまったり......。映画を撮っているときは、撮影の間中ずっと役でいようとするので、どうしてもそういうことが起きるみたいです。
いちばん大変だったのは、映画『悪人』(2010年公開)のときですね。『天地人』(2009年、NHK 大河ドラマ)をやったすぐ後だったこともあって、地元のかたが結構ロケを見に集まっていたんですが、孤独な殺人犯の役を演じていた僕にはギャラリーを相手にする余裕がまったくなくて、“もう少し愛想を振りまいたほうがいいわよ”みたいなクレームをたくさんもらいました(苦笑)。
それでもあのときは、何も感じないぐらい役に入り込んでいたから、素っ気なく“すみません”としか答えられなくて。大河ドラマでの印象を、だいぶ下げた気がします(笑)」