夢なら覚めないでほしいと思わせてくれる作品
不器用とも思えるほど、真摯な人。そんな妻夫木さんが演じたからこそ、『キネマと恋人』の寅蔵と高助も、それぞれ胸がきゅんとするほど愛すべきキャラクターになったのに違いない。
上田大樹さんの映像と、小野寺修二さんの振り付けによるステージングも見事にマッチした、映画への愛がたっぷり詰まった舞台『キネマと恋人』。公演規模も含め、パワーアップして再演される今回は、さらに深みを増したものになりそうだ。
「さすがに再々演はないだろうなと思うので、一つ一つのシーンを嚙みしめながら、大事に演じたいですね。それがKERAさんの色なのかどうかは、まだこの作品しか経験していない僕にはわかりませんが、まるでテーマパークか何かのアトラクションのように、どこか違う世界に連れて行ってくれる作品。
“夢なら覚めないでほしい”という気持ちにさせてくれる稀有な作品だと思います。ぜひ、そんな感覚を味わいに来ていただけたら嬉しいです」
いまや日本を代表する俳優の一人は、現在、38歳。今夏公開予定の日台合作映画をはじめ、映画の公開もいくつか控えている。今後の展望を尋ねると、
「もっといろいろなことに挑戦したいですね。(オファーを)待っているだけじゃなく、さらにもう一歩先に踏み出していけたらいいなと思います」というから、ますます頼もしい。
どうやら、昨年主演した連続ドラマのように、また自分で新たな企画を温めているようだ。
「でも、どんな企画か教えませんよ!(笑)話したら、自分の手元から離れていってしまいそうだから」。では、40代、50代、60代と、どんなふうに年を重ねていきたいと思っているのだろう?
「うーん......正直いうと、特に何も考えていないんです。ただ、いくつになっても子どものように、純粋に一つ一つのことを楽しめる人間でいたいなとは思います。安定を求める自分もどこかに絶対にいる気がするので、もっと自分を高めていかなくてはとも思うし、そのための努力は惜しまないようにしたいです。
要は、甘えないで、やることをしっかりやる。なかなか難しいことかもしれませんが、もっとできたなとか、あのときこうしていればと後で思うことがないように、一度やると決めたことは、しっかりやりきっていきたいなと思います」
妻夫木 聡/Satoshi Tsumabuki
1980年、福岡県出身。98年に俳優デビュー。日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などを受賞した映画『悪人』をはじめ、数々の映像作品に主演。2007年以降、舞台にも活躍の場を広げている。日台合作の主演映画『パラダイス・ネクスト』が今夏公開の予定。
世田谷パブリックシアター+KERA・MAP #009
『キネマと恋人』
撮影/西村裕介世田谷パブリックシアター2019年6月8日~23日
S席7800円ほか 世田谷パブリックシアターチケットセンター
電話:03(5432)1515
北九州、兵庫、名古屋、盛岡、新潟公演あり。
台本・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演/妻夫木 聡、緒川たまき、ともさかりえ、三上市朗、佐藤 誓、橋本 淳、尾方宣久、廣川三憲、村岡希美 ほか
表示価格はすべて税抜きです。
取材・構成・文/岡﨑 香 撮影/寺澤太郎 ヘア&メイク/勇見勝彦〈THYMON Inc.〉 スタイリング/片貝 俊
「家庭画報」2019年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。