ダミアン・プーラン 《Disruptive Thought》2019年 実際にプレイもでき、体験者に錯覚をもたらす卓球台。ナビゲーター・文/林家たい平そういえば最近「ユーモア」という言葉を使わなくなったなぁと思っていた矢先のこの展覧会だった。
落語の世界では、人情噺で人を泣かせるのは容易(たやす)く、滑稽噺で笑わせる方が難しいと言われている。泣くツボは共通するものが多いが、笑いのツボは、それぞれ、人生の中の経験値が違っているために、個人でバラバラだからだ。
展覧会を訪れる前にもう一度「ユーモア」という言葉を調べてみた。すると「湿気」「体液」を意味するラテン語「フモール」に由来し、中世の医学用語として用いられていた。と記されている。
また別の辞書には、人の心を和ませるようなおかしみ、諧謔(かいぎゃく)。とある。「諧謔」を引いてみると、おもしろさと共感とが混じりあった状況を描写する言葉、または動作による表現。となっていた。
敢えてここまでユーモアという言葉に向き合ってから出掛けてみると、ユーモアに対するアプローチが違った様々な作品群が、むしろこれがユーモアなんだと、観るもの一人一人の笑いの感性にヒットできるように集められたものなのだと理解できた。