体質や症状に応じて煎じ薬を調整し、完全オーダーメイドの治療薬を提供
漢方外来では、漢方薬による治療が行われ、西洋医学に加え漢方医学を専門的に研修した医師が診療を受け持っています。
「問診では患者さんの困っている症状だけでなく、生活スタイルや嗜好なども確認し、四診(望診、聞診、問診、切診)と呼ばれる東洋医学の伝統的な診察法を用いて、その人の証(しょう)(体質や全身状態)に適した漢方薬を処方します」と森先生は説明します。
また診断の結果、西洋医学のほうが適していると判断した場合は、漢方薬を出さずに望ましい治療法についてアドバイスをします。
ここで使われる漢方薬は、飲みやすく保存しやすい状態にあらかじめ加工された漢方製剤(エキス剤)ではなく、天然生薬を組み合わせた煎じ薬が中心です。
薬の種類によっては丸薬や散剤が使われることもあります。「薬剤師が一剤ずつ調剤しているため、生薬の種類は同じでも分量を変えたり、ほかの生薬を追加したりすることが可能です。こうした強みを生かし、そのときの患者さんの症状や全身状態に応じて処方内容を細かく調整していきます」と森先生。
つまり、完全オーダーメイドの治療薬が提供されるため、それだけ効果も高いというわけです。
「初診で処方した漢方薬を1、2週間服用した時点で再度受診してもらい、症状の変化を確認します。薬が適していればそのまま1か月ほど服用を続けてもらい、適していない場合は生薬の配合や分量などを見直し、もう1度、薬を調整します。いずれにせよ、的確に診断し最短ルートで治すことを大事にしています」
同時に副作用のチェックも行います。西洋薬と同じように、漢方薬を飲んだときにも動悸や粘膜の腫れといったアレルギー反応が出ることがあるほか、生薬にもよく知られた副作用があるからです。
「黄芩(おうごん)には肝機能障害、甘草(かんぞう)にはむくみや高血圧、山梔子(さんしし)には長く続けて服用した場合に腸管膜静脈硬化症が起こることがあります。これらの生薬を含む漢方薬を服用している人は特に注意深く見守りますが、血液検査や内視鏡検査などの定期的な副作用チェックをおすすめすることもあります」。
一方、漢方薬は原材料(生薬)がよくないと効果が期待できないともいわれます。そのため、同センターでは良質な生薬を使うことにもこだわります。
森先生によると、生薬や漢方薬に対する豊富な知識を持ち、品質管理にも精通した薬剤師が国内外から厳選した生薬を仕入れているそうです。
外からは見えない部分ですが、このようなことも同センターの特筆すべき点の1つです。
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北里大学東洋医学総合研究所
東京都港区白金5‐9‐1
取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
「家庭画報」2019年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。